menu

loading...

水槽のわき役?

 少しイメージしてみてください。皆さんは今、水族館にいます。目の前には水槽があります。自分がイメージする水族館の水槽を思い描いてみてください。

 水槽の中には何がいるでしょうか。大きなジャンプをするイルカの仲間でしょうか。ビュンビュン泳ぐペンギンの仲間でしょうか。それとも、ぷっくり膨れたフグの仲間でしょうか。

 水族館の水槽には、生き物だけが入っていることはあまりありません。岩だったり、砂だったりいろいろなものが入っていますね。

 

どうですか。イメージできましたか?

 

 その水槽に水草は入っていましたか?おそらく、水族館の水槽で、水草が入っている水槽をイメージされた方は少数だと思います。今回はあまり注目されない水草の展示についての話です。

 

 海響館では、世界中の魚を展示しています。下関で有名なフグは、外洋から、沿岸域、深海、そして川にも生息しています。川に生息している淡水フグは、アフリカ、東南アジア、南米などに分布する種を展示しています。淡水フグの展示水槽を見ると、フグだけではなく、水草と一緒に展示してあります。さらによく見ると、水槽ごとに展示している水草の種が異なっています。

 魚でも、陸上の動物でも、アフリカ、東南アジア、南米など分布域が異なれば、当然分布している種が異なることがほとんどです。そのため、その分布域ごとの展示であれば、魚だけではなく、同じ水槽の水草も同じ産地のものを展示する必要があります。

 

 例えば、南米淡水フグの水槽。種名のとおり、南米のアマゾン川に生息しています。ここで展示している水草には、被子植物のエキノドルスと呼ばれている水草があります。展示している種は小型種のエキノドルスオパクスという種ですが、大きな種では葉の長さが50cmを超えるほど大きくなります。

 スターレンジと呼ばれる、上から見ると星のような形に見える水草もあります。他にはアルアナサンセットというおしゃれな種名で呼ばれる水草も展示しています。こちらは飼育環境によって、葉の色が、緑色から赤色まで変化が見られます。水草はサンゴや魚よりも成長が早いため、すぐにその表情が変わっているように感じます。

 東南アジアの淡水フグ水槽には、リスノシッポと呼ばれる水草を展示しています。哺乳類のリスの尾に似ているからでしょうか。とても繊細な葉をもった水草で、アルアナサンセットとはまるで雰囲気が違います。

 アフリカの淡水フグ水槽では、アヌビアスと呼ばれるサトイモ科の水草を展示しています。こちらは、比較的分厚く、硬い水草です。他の水草に比べ成長は遅いです。

 水族館ではイルカやペンギン、魚などどうしても動くものに目がいきがちになりますが、ほとんど動いていない水草でも、皆さんに観てもらいたいという思いで展示しています。ぜひ水槽の隅々までご覧ください。

魚類展示課 園山貴之

PAGETOP