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第239回 食べる

 「食べる」ことは生きるうえで欠かせないことのひとつ。十分な食欲があるということは健康であることの指標でもあるので(種や季節などにもよりますが)、食べるということは動物たちにとってとても大切です。そこで今回は、イルカやアシカなど海獣類のエサについてお話ししましょう。

 海響館では、サバ・ホッケ・アジといった皆さんの食卓でも馴染み深いであろう魚を数種類与えており、時期や入手状況によってその種類や量を変えています。そして、このように様々な種類の魚を使っているのには理由があります。

 1つ目は、栄養の偏りを防ぐためです。魚に含まれる栄養は種類によって異なるので、様々な種類の魚を与えることで問題が生じないようにしています。

 2つ目は、不漁などの理由で手に入らない魚があったとしても、別の魚で対応するためです。食べている魚が1種類だけだと、その魚が手に入らなくなってしまった時に動物たちの食べるものがなくなってしまいます。急いで別の魚を与えようとしても、違和感などからなかなか食べないこともあるので問題になります。

 3つ目は、体調不良の動物にエサを食べるチャンスを増やすことです。動物が体調不良になった場合、魚の選り好みが出ることがあり、そんな時に数種類の魚から選択できるようになっていれば、どの魚なら食べられるのか、食べやすくなる方法はあるのかなど、エサが食べられるように様々なアプローチをすることができます。

 動物たちの1日のエサの量は1頭ずつ異なり、定期的に行う体重測定の結果を見て、どの個体にどの魚をどのくらい与えるのかを決めています。体重が増えているのか減っているのか、若い個体の成長のペースはどうなのか、繁殖期やエネルギーをたくさん使う換毛前(鰭脚類のみ)に十分脂肪は蓄えられているかなど、動物たちの状態を加味して、その時のその動物に合うエサの量や魚の種類を考えています。時々、「動物たちは1日3食ですか?」という質問をいただくことがありますが、海響館では「給餌回数は必ず何回」とは決めていません。決まった時間にエサが偏ることがないよう、なるべく午前と午後で同じくらいのエサの量になるように配分しながら、トレーニングやショーの回数などによって変わります。

 ショーやトレーニングの時間は、動物たちにとって頭で考えたり、体を思いっきり動かしてエネルギーを発散したり、トレーナーとコミュニケーションをとる時間であり、エサにはそれらを補助する役割もあります。動物たちの海響館での暮らしが楽しくなるよう、私たちトレーナーは動物たちとしっかり向き合えるこの時間をとても大事にしています。

海獣展示課

郷間 春菜

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