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第231回「イルカの尿を採る」

 人間の健康診断で馴染みのある尿検査ですが、海響館ではイルカでも尿検査を行うことがあります。尿からはイルカの健康状態について多くのことがわかり、海響館では主にたんぱく・糖・潜血(血が混じること)などの項目を検査し、体の中(主に腎臓)に異常が無いかを調べています。

 このように健康診断に有効な尿ですが、最初から簡単に採れるわけではありません。水中で生活しているイルカたちは、排尿も水中で行うため泳いでいるところを採取するのは不可能ですし、採取できたとしても尿が海水と混ざってしまい検査になりません。そのため、トレーニングによってイルカに上陸してもらい、その状態で排泄されるものを直接採取しています。

 しかし、上陸したら必ず排尿するというわけではなく、上陸した状態で排尿することもトレーニングで理解してもらうのです。

 トレーニングの流れの一例を4つの過程に分けて紹介します。

①姿勢をつくる

 海水が混ざりにくくなるように、イルカが横向きに上陸した状態を採尿の姿勢としています。海響館では横向きに上陸することをトレーニングしているため、その行動を採尿でも利用しました(写真1)。

②排尿のきっかけを探す

 ひたすら待ってみたり、お湯をかけてみたり、マッサージをしてみたり、給餌後の尿が出そうな時間帯にやってみたりと、考えられる色々な方法を試してどんな時に尿が出やすいのか観察をします。

③排尿の頻度を増やす

 きっかけを見つけることができたら、イルカが排尿した時にご褒美の魚をあげてしっかり褒めてあげます。褒めることでイルカは排尿することを学習するようになります。

④トレーナーの合図で排尿させる

 トレーナーの合図で排尿させるようにするためにイルカの排尿と同時にトレーナーがイルカに合図を出すようにします。③と④のトレーニングを繰り返し行うことで、最終的にイルカはトレーナーの合図で排尿するようになり、出てきた尿は直接容器に採ります(写真2、3)。

 まだトレーニングの途中であるため採尿ができる確率は高くなく、量にもバラつきはありますが、今後もトレーニングを続け、安定して採れるようにしていきたいと思っています。

海獣展示課

鍬崎 賢三
 

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