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アマモ飼育奮闘記

アマモって知っていますか?

海の中に生えているため、海藻の仲間と思われがちですが、陸上の植物と同じ仲間で海草と呼ばれます。海藻には根がありませんが、アマモには根、茎、葉があり、花を咲かせ種を作ります。浅い砂浜に生えていることが多く、小さな生き物の産卵場や生育の場となるため、海のゆりかごと呼ばれています。近年、埋め立て等で数を減らしており、海の生き物にとって悪影響のため、アマモを増やそうという動きが各地で広がっています。光合成により二酸化炭素を吸収するため、地球温暖化防止に役立つブルーカーボン(海洋生態系に取り込まれ、長期間溜め込まれた炭素)としても注目されています。

そんなアマモですが、水族館業界では飼育が難しい生き物としておなじみです。当館では試行錯誤をしながら何とか維持できるようになってきましたので、今回はその様子をお話ししたいと思います。

まずは水温です。温度が高くなると、それを感知して花を咲かせます。アマモにとって良いように感じますが、花を咲かせてしまうとそれが種になり、アマモ自体は枯れてしまうのです。種から育てるのはとても難しく時間もかかるため、当館では枯れないように、水温が上がりすぎないようにコントロールしています。

次に肥料。植物の仲間なので根から窒素やリンなどの栄養分を吸収しています。それを補うために園芸用の肥料を定期的に砂の中に埋めています。

最後は何と言っても光。これが最も大切です。私の中では、光8、肥料2ぐらいの感覚です。燦々と降り注ぐ太陽の光を使って光合成を行い、栄養を作っているため、強い光は欠かせません。そのため、水槽用のライトでそれを再現しなければなりません。これが試行錯誤の連続でした。

水槽を立ち上げてすぐは、メタルハライドランプ(以下、メタハラ)という太陽光に近いライトを使っており、割と順調に生育できていたのですが、近年のLED化の流れから、水槽用のライトもLEDに変更していかなければならなくなりました。そこで、メタハラ(写真左側)と太陽光に近い様々な波長を出せる市販のLED(写真右側)を比べながら試してみました。しかし、変更してしばらくは維持できていましたが、徐々に衰退していってしまいました。

そこで、照明等を製造する会社の方にご協力いただき、LEDの試作品(写真右側)を作っていただきました。

設置してみると非常に明るく、「これはイケる!」と期待したのですが、しばらく経ってもそれほど成長がみられませんでした。
光量子(光エネルギーの粒子の量)を計測してみると、メタルハライドランプに比べて少ないことが判明。明るくても少ないという結果に意外性を感じながら、さらに試作品をもう1灯追加していただき、光量子を増加させました。
その結果、徐々に成長が速くなり株も増えはじめ、水槽内に多く生えるようになりました。

これで一安心、と思ったのも束の間。今度は明るくなりすぎたのが影響したのか、アマモ以外の邪魔な藻類が生える頻度が早くなってしまいました。そこで照明会社の方に相談したところ、黄色~オレンジ色のフィルターをかけて青色の光を弱めることにより、アマモだけを成長させられるかもしれない、とのことで、現在それを試しているところです。

今後も引き続き試行錯誤を重ね、美しいアマモがびっしり根付いた水槽を皆さんにお見せできるようにしていきます!

魚類展示課 石橋 將行

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