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こわくないサメ

 怖い、人を襲う、歯がギザギザ、泳ぎが速い・・・サメと聞くと、これらのイメージが真っ先に浮かぶ方が多いのではないでしょうか。確かにサメをモデルにした映画等ではこのようなシーンが描かれることがあります。インパクトが強い為、記憶に残りやすいのかもしれませんね。

 しかしながら、世界中に約400種類、日本に約130種類知られるサメの仲間のうち、人間に危害を加えたことがある種類は約40種類で、多くの種類はそれほど恐れる必要がないサメなのです。

 今回は、海響館にいるおとなしい性格をした底生性のサメの仲間をご紹介しましょう。

 まずはこちら。

 

 

 成長しても全長約40cmの小型のサメ、トラザメです。和名は「虎」を連想して名付けられたようですが、英名は「cloudy catshark」訳すと「雲紋状の「猫」ザメ」となっています。皆さんは虎と猫、どちらに見えるでしょうか。本種は、水深約300mまでの冷たい海の底にすみます。光の届きづらい海底で生活しているため、目には光を反射して集めるタペータム層が発達し、においを感じる鼻孔も駆使してエサを探します。特定の繁殖期は無く、通年20~30日周期で一度に2つの卵を産むのが特徴です。硬い卵殻に包まれた卵は、その形から「人魚のサイフ」とも呼ばれ、卵殻の中には栄養である卵黄と胚(赤ちゃん)が入っています。水温にもよりますが半年から1年程度で生まれてきます。光に透かして見ると、卵殻の中で胚が成長していく様子が観察できます。

 

 

 つぎはこちら。

 

 

 正真正銘和名は「猫」を連想してのものです。しかしながら英名は「bullhead shark」。つまり「牛のような頭をしたサメ」です。確かに目の上の骨が猫耳にも、牛の角のようにも見えます。こちらも海の底にすみますが、比較的浅い岩礁域で生活しています。別名「サザエワリ」とも呼ばれ、硬いサザエの殻をかみ砕くアゴの力とかみ砕きやすい平たい歯を持っていますが、人を襲うことはありません。しかしながら、海響館ではエサと間違えて腕や太もも等をかまれることがあり、結構痛いです。トラザメ同様卵殻に包まれた卵を産みますが、その形はさらに変わっています。それがこちら。

 

 

 まるでドリルのような形。トラザメの卵は付着糸を使って海藻等に絡み、海流に流されにくくなっていますが、こちらはドリルのようなヒダが岩の間等にひっかかりやすくなっています。生まれてくるまでに1年程度の長い時間がかかるため、流されにくい構造は重要なようです。

 最後にこちら。

 

 

 平べったくてエイの仲間と間違えてしまいそうですが、正真正銘サメの仲間、カスザメ。「サメ」と「エイ」は鰓孔が腹面にあるか(エイ)、側面もしくは背面にあるか(サメ)で見分けられます。

 英名は「angel shark」。確かに真上から見ると天使のような形です。上記2種と同じく海の底で生活しますが、砂に潜って隠れ、獲物を狙う待ち伏せ型のハンターです。エサやりの際にいつも驚かされますが、その食べるスピードは1/100秒ともいわれ、エサの魚が一瞬で口の中に吸い込まれ、尖った歯でとらえられてしまいます。しかし、間違えて指等を吸い込まれてしまわない限り、人が危害を加えられることはありません。本種は、上記2種と異なり、卵ではなく親と同じ姿の稚魚(赤ちゃん)を産みます。

 

 いかがでしたか?サメに対するイメージが少しでも変わったでしょうか。おとなしい、こわくないサメはもっとたくさんいますので、気になった人は是非調べてみて下さいね。

 

魚類展示課 石橋將行

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