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新しいショーを創り上げるまでに

 海響館のイルカとアシカの共演ショーは、おおよそ2~3年毎に大きく内容を変更しています。ショーの内容は、毎回私たちトレーナーが構成、演出、音楽、衣装や小道具などを一から全て考えています。今回創り上げるショーは、約8カ月の休館を経て新たに始まるということで、皆さんの期待もひとしおかと思います(そうあって欲しい)。その期待に応えられるよう令和6年4月から、スタッフ同士で「ああでもない」「こうでもない」とたくさんの意見を重ねる中で、検討したショーのタイトルはなんと12個、構成(一通りの流れ)は36パターンにものぼりました。そして、ついに令和7年2月にショーの内容とタイトルが決定しました。詳しい内容はまだ秘密ですが、今回は新しいショーを創り上げるためにどんな手順で考え、どんなこだわりを持っているのかをご紹介します。

 新しいショーを創り上げる第一歩は、スタイルから決めていきます。スタイルはストーリー仕立てとプレゼンテーション形式の大きく2つに分かれています。休館直前までは、「ビーチセイバーズ~Sealion Dolphin Globe Show~」というタイトルで、海洋ゴミについて考えるきっかけになるようにストーリー仕立ての構成としていました。今回は、雰囲気を大きく転換するためにプレゼンテーション形式のスタイルとしました。

 スタイルが決まったら、次に5つの要素(➀メリハリをつける(起承転結)、②違和感のない流れ・展開にすること、③笑いがあること(お客様に楽しんでいただく内容)、④お客様からの自然な拍手が生まれること、⑤学びがあること)を柱としながら構成を検討していきます。➀②では展開がなくダラダラとした流れにならないように、どこでどのようなパフォーマンスをするか、アシカはどこで登場するかなどを考えていきます。ショー全体に統一感は必要なので、起承転結を意識しすぎて違和感のない流れになっていないかを、実際にトレーナーがリハーサルをしながら確認していきます。

 ③④では、内容を堅苦しくするのではなく、動物たちの素晴らしい能力を最大限活かすために、お客様がショーに引き込まれ、動物たちのパフォーマンスや能力に対して感動することで自然と拍手が生まれるような演出や表現になるような構成としていきます。

 そして⑤では、水族館の役割の1つである「教育」の部分を盛り込んでいきます。水族館は命の大切さや生き物の生きざまを感じてもらい、気づきや学びを得ていただく場所でもあるため、「楽しい」の先に学びがあるような内容になるように考えています。これらの5つの要素を様々な視点から精査しながら、構成がまとまってきたら、ショーのイメージに合った衣装と雰囲気を盛り上げる音楽を考えていきます。そして、皆さんに最高のショーをお届けするためにトレーナーのアナウンスの練習とリハーサルを重ねて、違和感があるところはないか?伝わりづらい部分はないか?の最終確認をしながら仕上げていきます。最後に動物たちを交えて完成となります。 

 このようにイルカとアシカの共演ショーは、お客様が楽しみながら動物の能力の素晴らしさを感じ、楽しく学んでいただける時間になるように、トレーナーが試行錯誤しながらこだわりをたっぷり詰めて創り上げていきます。もちろん内容のこだわりだけでなく、動物たちの新しいパフォーマンスもご覧いただけるよう日々トレーニングも進めています。新しくなるイルカとアシカの共演ショーを是非楽しみに待っていてください。

※「ショー」というと、人が動物に対して「強制しているのでは?」と思われる方がいるかもしれません。しかし、実際は飼育している動物たちが心身ともに健康を維持するために、私たちと動物がコミュニケーションとして日々行っていることを皆様に公開しているものです。動物たちの日々の生活に良い変化となること、新しいことをたくさん考えられること、そして体を動かすことでエネルギーが発散できること、それが「ショー」の重要な役割の一つなのです。

海獣展示課

髙木 陽友美

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