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コミュニケーション

 『コミュニケーション』という言葉をよく耳にすると思います。その意味を辞書で調べると、「言葉や文字などで、お互いの考えや気持ちを伝えあうこと」と書かれています。また言葉だけでなく、身振り手振りや表情、声のトーン、視線の動きなどの非言語的要素も含まれるそうです。今回は、私たち海獣類のトレーナーが動物たちとどのようにしてコミュニケーションを取っているのか紹介します。

 私たちは、言葉を使ってコミュニケーションを取ることができない動物たちに「こうして欲しい」という気持ちを身振りや手振りなどの“合図”を使って伝えています。そして、それが動物に伝わっているのかは、動物たちの動きや反応、目、表情などを見て判断しています。ポイントは、細かく観察し、動物がわずかに発信する違いを読み取ることです(実際には、動物がトレーナーに対して意図的に意思表示をしているのかは分からないのですが、私たちはこの関係をコミュニケーションとしています)。

 完成した行動の一例を紹介すると、トレーナーがイルカにジャンプの合図を出したのに、イルカはその場でくるくると回ったとします。この時、私たちは「なぜジャンプではなく回ってしまったのか?」をイルカの“行動”に着目し、原因を推測し、その後どう接するべきかを瞬時に考えます。もし、わずかに目を少し閉じるような行動があったのであれば、『太陽がまぶしくて合図が見えづらく間違ってしまったのかな?』(状況が原因?)、もしくは『体調が悪くて合図を見るに至らなかったのかな?』(体調面の問題?)、また『単に集中していなかったのかな?』(気分の問題?)など、間違った行動が起こった原因を絞り込むのです。そして、“太陽”が原因だと推測した場合は『じゃあ次は日影で合図を出してみたら上手くいくかな~』と考え、試してみますし、もし“体調”が原因だと推測した場合は、すぐに血液検査などの検診を行い原因を探ります。このように、トレーナーの観察と考察力によって、その後の対処の仕方は変わるのです。もちろん、言葉を使って会話ができないので、真相はイルカに聞かないと分かりませんが、私たちは決して「ジャンプをして欲しい」と一方通行で伝えているのではなく、自分の合図が動物に伝わっているのか?動物が今どんなことを考えているのか?を細かい“行動”の観察を通して、想像しながらコミュニケーションを取っているのです。このような日々のコミュニケーションが動物たちとの信頼関係の構築に繋がっていると考えています。トレーナー1年目の私は、動物たちに気持ちがなかなか伝えられず難しいなと感じる場面もありますが、上手く伝わったときはとても嬉しいものです。

ちなみに、重要なのは動物に対するトレーニングとは決して強制するものではなく(そもそもできない)、動物がトレーナーと接することを楽しみ自主的に色々なことをするということなのです。

海獣展示課

梅崎 修大

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