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褒めてのばす、やればできる!

 突然ですが「自分は褒められてのびるんです!」という人、多いのではないでしょうか。私はトレーナーになって4年目になりますが、今でもトレーニングやショーがうまくいったときには他の人から「褒められたい!」と思っています!実はそれ、動物たちも同じなんです。

 海響館では、トレーニングを動物とトレーナーとのコミュニケーションだと定義しています。トレーナーは一方的に教え込むのではなく、自分が動物に何をしてほしいのかをどのように伝え理解してもらうかを考え、逆に動物が何を求めているかを感じ取ることが必要であり、お互いに意思疎通を行うことこそがトレーニングなのです。そして、このトレーニングにおいて最も大切な事こそ、タイトルにある「褒めてのばす」ということです。トレーニングの中で求めている行動を動物が行った時、トレーナーが「今の良かったよ!」と伝えると、動物はその行動をより頻繁に、またより力強く行うようになります。例えばイルカの水平ジャンプ。最初は低いジャンプでも、「良かったよ」と繰り返し伝えることで、ジャンプが高くなり、繰り返し行うようになるのです。

 それでは、「動物を褒める」とは一体どういうことでしょう?それを伝える手段として皆さんがイメージするのはエサだと思います。確かに動物にとって一番褒めていることが伝わるのは食べ物ですが、それ以外にもトレーナーが行う拍手や体を触るといった手段を使うこともあります(拍手や体を触ることは、エサの魚などと関連付けたもの)。つまり、「褒める」とは動物が「うれしい」「楽しい」などの喜びを感じることをしてあげることなのです。

 ここで大切なのは、トレーナーが褒めた(と思っている)あとに動物が同じ行動を繰り返す、もしくは少し進歩した行動を行うことです。その結果があって、初めてトレーナーが褒めたことが伝わったといえるのです。逆に動物が求めていない行動をした時には、トレーナーは怒るのではなく、まず合図を出してその行動を止めて(海響館ではリコールと呼ばれる金属の道具を使用します)、今度はこちらの意図が伝わるように丁寧に合図を出すなど工夫し、どうすれば伝わるのかを考えます(リコールについてはイルカ・アシカ情報第207回「「カチン」あの音はどこから?」にてより詳しくお話ししています。)

 動物トレーニングで重要なのは、動物が嫌なことを極力しないことです。動物に自分の求めることが伝わらないからといって怒ったとしても、それは動物には伝わらずお互いにフラストレーションが溜まっていきます。すると動物にとってもトレーニングがネガティブな時間になってしまいます。それが積み重なると、動物は集中力を欠きトレーナーのもとから勝手に離れる、また時には攻撃的な行動が出てしまうなど、望ましくない行動が起こる可能性もあります。トレーニングがスムーズにいかない時、トレーナーは“出来た、出来なかった”という結果よりも“なぜ出来なかったか”という原因を考え、“次はどうするか”という対策を決めることが重要です。そのような試行錯誤を繰り返し、お互いにとってトレーニングがポジティブな時間となることを目指しています。

 「動物と話せるんですか?」と聞かれることもある職業ですが、話せないからこそ日々上手にコミュニケーションをとり、動物と愛情深く接することを積み重ねた結果、話ができていると思うくらい動物の状態を感じ取ることができるのです。アクアシアター(イルカとアシカの共演ショー)で、そんな動物たちとトレーナーの関係を感じて頂けたら、是非大きな拍手をお願いします。その拍手が私たちトレーナーの励みにもなります。

 動物たちも、トレーナーも、褒めてのびる!やればできる!

海獣展示課

髙橋 紘香

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