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スタッフの成長への一歩

 私たち海獣担当のスタッフはトレーニング(海響館ではエンリッチングと呼んでいます)を通して、動物とたくさんの時間を過ごしています。今日はその中でも、動物が新しい行動を身につけていく過程である「行動形成」に注目し、スタッフが成長するための裏側のごく一部を皆さんに紹介したいと思います。「行動形成」とはその字のとおり行動を形作っていくことで、動物が新しい行動を覚えていくときに、スタッフが「今のその動き、いいね」「その調子だよ」と伝えながら、小さなステップの積み重ねで、少しずつ目標の行動に近づけていきます。

 私は時々、行動形成をしている時の姿を動画に撮ることがあります。なぜ動画を撮っているかというと、後で見返すためです。スポーツなどでも動画を撮り、自分の姿を客観的に見て反省をすることで次に活かすことがありますよね?私たちも同じで、自分自身がどのように動物と接しているのか、客観的に見返すということがとても勉強になるんです。私は海獣類を担当して3年目で、今も日々先輩方から、そして動物からたくさんのことを教わっています。会話をすることができない動物を相手に、「こんなことをしてね」と伝えることは難しく、うまくいかないこともあります。その時に撮っていた動画を見返し、自分自身の動きや動物とのコミュニケーションのとり方を先輩にも見てもらいつつ、次はどのようにすればもっとうまくいくのかを考えるのです。

 今回は、カリフォルニアアシカのデイニーとのエンリッチングを動画に収めていたので、私とデイニーのコミュニケーションの取り方の変化、そしてそれとともにデイニーの動きがどのように変化したのかをご覧いただきたいと思います!

ターゲットを使い、デイニーを誘導して空中で一回転する行動を形成することが目標です。

※ターゲットとは、動物に特定の場所を示すための目標物のこと。

まずはこちらをご覧ください。ターゲット(トレーナーが持っている棒)の動きとデイニーの動きにご注目ください。

 この動画で見ていただきたいポイントはデイニーの回る位置です。

 水面より少し上で回っているため、次の段階として「もっと高い位置で回る」ということをデイニーに伝えるために、ターゲットを高い位置に提示し、そのターゲット目掛けてジャンプすることを目標としました。しかし、デイニーの動きを見ると高さの意識はほとんどなく、ターゲットが提示されている下で回ればいいと認識しているように見受けられます(写真左)。 そこでターゲットをいきなり高い位置に提示するのではなく、まずはデイニーが回りやすい低めの位置に提示し、先に「ターゲットにタッチしてから回る」ということを伝え高さを少しずつ上げました。(写真右)

写真を見比べると、ターゲットとの距離やデイニーが飛び出している高さの違いがわかると思います。

動画を見返すことで、デイニーがどのように考えているのか、私が何を伝えようとしているのか、ターゲットの動かし方は良いのかなどを見返すことができ、ジャンプが高くなり、より迫力のあるアシカの姿を引き出すことができました。 この行動は、まだプレゼンテーションではお見せしていないのですが、少しでも早く皆さんにご覧いただき、アシカの迫力のある動きと魅力をお届けたいと思っています。

※「エンリッチング」とは?

海響館が作った造語です。

動物トレーニングのことを指す言葉で、トレーニングの本来の目的が「動物を心身共に健康にするため」であり、「エンリッチメント(環境を豊かにする)の一つ」という考えから、それを適切に表現するために「エンリッチング」と呼ぶことにしました。トレーニングは、日本語では「訓練」や「調教」と訳され、人でも「鍛錬」などに用いられる言葉であるため、動物トレーニングは動物に何かを強いているものとして捉えられることが多くあります。しかし、実際には強いるものではなく、動物に良い影響を与えるものであるという正しい理解を内外に広く認識してもらうために造語で表現することにしました。

海獣展示課

金山 彩女

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