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餌料管理
水族館の動物たちが食べているエサは、直接体内に入るもので動物たちの健康に直結しているため、日々管理を徹底しなければいけません。今回は海響館の海獣類(イルカやアシカ、アザラシなど)に与えているエサの管理についてご紹介します。
ほとんどの水族館がそうなのですが、海獣類のエサは基本的に冷凍のものを使用しています。その理由は、冷凍することで魚の体内外にいる寄生虫が死ぬので寄生虫の感染予防のため、多くの量が確保できることから安定した入手ができるため、そして冷凍により鮮度を保ち長期保存が可能なためです。それでは動物たちの口にエサが入るまでの手順を追って説明していきましょう。
①エサの購入
冷凍のエサを取り扱う業者さんから、サンプルの提供を受け、官能検査(見て、触って、臭って検査します)を行い、鮮度の良いものを選定し購入します。この検査では、12項目について点数をつけ、基準の点数以上のものを合格とします。この第一関門がとても重要なので、必ず経験豊富なスタッフのみがこの検査を行います。(金額が安ければ良いというものではありません)。購入したエサは、業者さんの大型冷凍庫に保存し、数日分を海響館内にある冷凍庫に運び入れながら、使用していきます。
②解凍
解凍方法は水族館によって違いがあるのですが、海響館では次の通りの手順で行っています。1. 午後に翌日分のエサを冷凍庫から取り出します。2. 冷凍ブロックに付着している細菌の殺菌を目的に、中性電解水※に約15秒間浸します。3. 海水を溜めた水槽に入れ、一晩かけて解凍します。この時、殺菌しきれなかった菌の増殖を抑えるために水槽内の海水の温度に気を使っていて、海水温が高い時には先に氷を入れ、できるだけ低い温度で解凍しています。月に数回は解凍前後の水温を測定し、解凍時の温度確認を行っています。
※中性電解水とは、食塩水を電気分解して得られる水で、次亜塩素酸を主成分としており、強力な殺菌力を持ちながらも、人体や動物に対して刺激が少ないのが特徴です。

【写真 海水を溜めた水槽の様子】
③選別
解凍後のエサは毎朝手作業で魚の状態(傷が入っていないか)や混入物がないかなどをチェックして選別します。限られた時間の中で大量にあるエサをすべてチェックするので、丁寧かつ素早さが重要な作業です。
④配餌・調餌(はいじ・ちょうじ)
選別したエサを個体ごとのバケツに計量しながら入れていきます。使用するエサは4種類ほどで、動物たちの定期的な体重測定の結果や動き、反応などを見ながら各種の配分と量を適正になるように決めているので、担当者は間違わないように作業を行います。また、この時にも魚の状態を確認しています。海響館では、エサが持つ栄養をしっかりと動物に与えるために、基本は丸のまま与えています。(イルカやアシカ、アザラシなどは基本丸飲みにするので)。但し、体調や年齢によって必要な場合は切り身にしたり、3枚おろしにしたりしたものを与えるようにしています。場合によっては、アジのゼイゴ(尾の近くにあるトゲ状のウロコ)やヒレなどトゲトゲした部分を取り除くこともあります。
⑤保管
配餌が終わったら、解凍時同様、菌の増殖、魚の表面の乾燥を防ぎ、鮮度を保つために、バケツの中に冷やした中性電解水を入れ冷蔵保存します。スタッフが何度もバケツに手を入れることによる手指からの汚染を防ぐため、午前用と午後用のバケツに分けています。さらに、バケツの水がドリップ(細胞が壊れ栄養素とともに流れ出る液体のこと)により細菌が増殖することを考慮し、適宜水の交換を行っています。
⑥その他
購入から保管までの手順の他に、冷凍庫から外に出したエサのバケツは放置しないことや、床に落ちてしまったエサは動物に与えないことなども徹底しています。
ここまでしっかりとした管理を経たエサを動物たちの口の中に入れるようにしています。食の安全というのは人も動物も同じで、これは飼育の基本です。動物たちが健康で、そして長生きできるようにスタッフが行っている裏側のことを知っていただくと、また違ったことが見えてくるかもしれません。

海獣展示課
梅崎 修大


