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イルカの毛

 犬や猫など、多くの哺乳類の口元に生えているヒゲは洞毛(どうもう)と呼び、感覚器官の一つです。しかし、哺乳類であるヒトの口の周りに生えているヒゲは洞毛ではなく体毛です。

では、水中で暮らす哺乳類であるイルカやスナメリは、どうでしょうか?

ぱっと見たところヒゲは見当たりませんね。しかし、ぐーっと近づいて上顎(じょうがく)をよく見てみると・・・

毛は見当たりませんがなにやら点々がありますね。この点々はいったい何でしょうか?

これは、“毛穴”です。実は、イルカやスナメリは生まれた直後から数週間は毛が生えており、成長すると無くなって毛穴だけが残るのです。そして、この毛は多くの哺乳類と同じ洞毛なんです。

 皆さん、ここで疑問が生まれませんか?生後数週間で無くなってしまうのなら、この毛、そして毛穴は必要あるのでしょうか?

実は、この毛穴にしっかり役割があるようなんです。海外の研究で、バンドウイルカは毛穴で電場を感じ取っていると報告されました(2023年)。

電場は、電気を持っているものがまわりに作る「見えない力の空間」です。たとえば、静電気で髪の毛が立ったり、風船をこすると壁にくっついたりすることがありますよね。これらはすべて、ものが電気を持っているから起こる現象です。私たち人間が静電気を感じることがあるように、生き物も電場を持っています。

バンドウイルカはエサである魚などの体の中で流れる電気信号などを感じ取ることができるようなんです。

電場を感じ取ることで、海底の中で動いている生き物が発する微弱な電気を感じ取りエサを探す「クレーターフィーディング」や、周囲の地形や電場の変化によって位置を把握することに役立てている可能性があるのではないかと考えられています。

また、長距離の移動の際や回遊経路を決める時などに地球の磁場を感じ取ることで、地球規模での空間認識にも関わっている可能性があるようです。

毛穴にこんな秘密が隠されているなんて・・・とても不思議だと思いませんか?

海獣展示課

安野 花音

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