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膨れるフグ

 フグの仲間といえば何を思い浮かべるでしょうか。まずは「毒」というイメージが強いように思いますが、それともう一つ、『膨らむ』というイメージもあるのではないでしょうか。

 

 フグの仲間の中で膨らむことができるのは、トラフグなどが含まれるフグ科と、ハリセンボンなどが含まれるハリセンボン科だけです。膨らむときに邪魔になる肋骨や腹ビレはなく、飲み込んだ水を膨張嚢(ぼうちょうのう)と呼ばれる器官に入れ、体を大きく膨らませます。

 

 

 実はこの膨らむ様子をよく観察すると、膨らんだ姿が種によって大きく違います。

 

 トラフグやクサフグは、トラフグ属というグループに属しますが、トラフグ属の仲間は外見からだと腹部だけを膨らませます。それに対して、コクテンフグなどのモヨウフグ属の一部のフグは体全体が膨らみ、臀ビレや種によっては背ビレも巻き込まれてまん丸に近い形になります。ハリセンボン科でも、イシガキフグは腹部のみしか膨らみませんが、ハリセンボンは体全体が膨らみます。

 

 

 膨らみ方が違うと、飲み込んだ水がどのくらい違うのか気になります。

 

 実際に測ってみました。

 

 

 測ってみた中で体重当たり最も多くの水を飲みこんだのは、モヨウフグ(体長153.5 mm)で、飲み込んだ水の量は体重の7.6倍もありました。それ以外ではハリセンボン(体長123.0 mm)は2.3倍、トラフグ属では、トラフグが体重の約2倍の水を飲みこむことが報告されていますが、ヒガンフグ(体長135.5 mm)は2.0倍、コモンフグ(体長145.0 mm)は1.1倍、ゴマフグ(体長208.0 mm)で1.0倍程度のようです。

 

 体全体が膨らむモヨウフグ属はやはり飲み込んでいる水も多いようですね。しかし予想に反して体全体が膨らむハリセンボンはモヨウフグよりは少なく、腹部だけが膨らむヒガンフグと同じくらいでした。体の大きさによって、吸い込む水の量が変わることが知られていますが、まだまだ調べてみる必要がありそうです。

 

 この膨らむ行動は、敵から身を守る行動であることが知られていますが、水槽の中でそれとはちょっと違う行動が見られました。

 

 ある日の朝、水槽の中のフグを観察していると、他の生き物から襲われるわけでも、びっくりしているわけでもないのに、なんとフグが膨らんでいくではありませんか!!何か嫌なことでもあったのかと思いましたが、数日おきにおおよそ同じような時間に膨らんでいるようです。もしかすると膨らむ予行練習なのか、それとも、朝の伸びのような行動なのか?・・・・・生き物のことはわからないことだらけです。

 

 

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魚類展示課 園山貴之

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