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ネグロ川にこだわって

 

 海響館の2階にはアマゾン川の生き物を展示している水槽が2つあります。1つは「熱帯雨林水槽」と呼んでいる水槽で、2 m程度のピラルクが悠々と泳いでいます。もう一つは「熱帯雨林の川と水草」と呼んでいる水槽で、水草と一緒に様々な生態を持った魚類を展示しています。今回は「熱帯雨林の川と水草」の水槽をのぞいてみましょう。

 

 

 「熱帯雨林の川と水草」の水槽は、「熱帯雨林水槽」と同じく、南米のアマゾン川に生息している魚類を展示しています。アマゾン川といえば、世界最大級の河川で、日本の国土の15倍の流域面積を誇り、川幅は最大で50 km、水深は120 mにもなることで知られています。

 日本の川にも様々な生物が生息していますが、同じ川でも環境の違いにより、それぞれの生き物が好む環境が決まっています。そのため、上流域のみにいる種や下流域のみにいる種がおり、同じ川と言っても、自然とすみ分けができています。同じ川でも違いがあるため、河川が変われば、たとえ同じ県内や市内であっても種が異なることもしばしばです。

 ではアマゾン川ではどうでしょうか。アマゾン川はいくつもの川がつながってできており、アマゾン川という名前はそれらの川の総称です。それぞれの川は水質も異なり、河川ごとに種が異なります。「熱帯雨林の川と水草」水槽ではネグロ川という川にいる魚を中心に展示しています。

 

 

 中でも私の一押しはヘッケルディスカスという魚です。ディスカスはその名の通り円盤のような形をしています。ディスカスはアマゾン川にのみ分布し、研究者によって差がありますが、ヘッケルディスカスを含め2種から4種いることが知られます。ヘッケルディスカスは体に太い暗色の縞模様が1本あるのが特徴で、ネグロ川とその周辺域の限られた場所に生息しています。

 このディスカスの生態的特徴は何と言っても「ディスカスミルク」と呼ばれる親魚の体表から出る粘液で子育てをすることです。ディスカスはふ化後まもなく親魚の体表に噛みつき、ふ化約30日後まで親魚の粘液を食べます。通常、魚の体表には常に粘液があり、体を守るために使っていますが、このディスカスの粘液は子育てのときにその栄養分が変化することが知られています。

 展示している水槽内ではまだディスカスの繁殖・子育て行動は見られませんが、この変わった子育てを皆さんに観察していただけるよう繁殖に力を入れていきたいと思います。

 

 海響館の展示水槽には、様々な生き物がいますが、すべて飼育員がこの生き物をみてほしい!と考えに考えた生き物を展示しています。飼育スタッフのそんなこだわりを多くの来館者に感じていただけるよう日々頑張っていきます。

 

魚類展示課 園山貴之

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