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サンショウウオの現状と今後

 

 皆さんこんにちは!今回のお魚探検隊は、近年研究が進み新種が次々と発見されているサンショウウオの仲間についてです。サンショウウオといえば、天然記念物になっている最大全長が1mを超えるオオサンショウウオが有名ですが、日本にすむ他のサンショウウオの仲間は全て20㎝にも満たない小型の種ばかりです。2019年5月現在では43種が知られていますが、十数年前の図鑑等には20種ほどしか載っていませんでした。この急激な種の増加は、研究により元々1つの種とされていたサンショウウオが、地域による体型や模様等の違いにより別の種に分けられたからです。

 

 

 最近では、2019年2月に関西~九州北部、四国の一部等に幅広く生息しているカスミサンショウウオが9種に分かれるという論文が発表されました。ここ山口県で確認されていたカスミサンショウウオも、下関市や美祢市等に生息しているものはヤマグチサンショウウオ、阿武町等に生息しているものはアブサンショウウオという名称で新種となりました。さらに島根県との県境にはイワミサンショウウオという種も生息しているかもしれません。また、別の種ではブチサンショウウオが2019年1月に3種に分かれ、県内で確認されていた種はチュウゴクブチサンショウウオという新種になった他、2012年以降にハコネサンショウウオが6種に分かれ、県内にはその内のハコネサンショウウオとシコクハコネサンショウウオの2種が生息しているかもしれません。さらには、ヒダサンショウウオという別の種も生息するとされています。

 

 

 まとめると、県内に生息するのは、数年前までオオサンショウウオを除くとカスミサンショウウオ、ブチサンショウウオ、ハコネサンショウウオ、ヒダサンショウウオの4種とされていたものが、現在は、ヤマグチサンショウウオ、アブサンショウウオ、イワミサンショウウオ、チュウゴクブチサンショウウオ、ハコネサンショウウオ、シコクハコネサンショウウオ、ヒダサンショウウオの計7種になる可能性があるという事です。ほとんど同じような見た目の生き物からの新種の発見は、研究者の方々の大変な努力による資料集めと解析によるもので、生物に関わる仕事をしている私は本当に頭が下がる思いです。

 

 

 少し難しい話をしてしまいましたが、現在日本ではサンショウウオの仲間を含め、カエルやイモリ等の両生類の多くが全国的にその個体数を減らしているといわれています。これは道路整備や河川の改修等で、生き物たちにとって重要なすみかや繁殖地等が徐々に減っていることが原因の一つと考えられます。両生類の仲間は基本的に移動能力が低く、地域ごとの小さな個体群が、他の地域の個体群と交わることなく貴重な遺伝子を守りながら現在まで生き残ってきたのかもしれません。そのため、それらの地域ごとにあるわずかなすみかや繁殖地を大事に守っていくことが、今の私たちにできる最大限の保護かもしれません。

 

魚類展示課 柿野敦志

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