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海響館で骨探!~水中で暮らすために~ 鯨編

 皆さんこんにちは!お魚探検隊員の久志本です。今日は海響館で骨探検パート2!今回も海響館の中の海の生き物の骨を一緒に見ていきましょう!3F展示エリアのフグのゾーンを通り抜け、2Fへと降りるエスカレーターに乗ると巨大な骨格が見えてきます。まわりの家族の声に耳を傾けていると、「えっ?この大きな骨は本物?」「わぁ恐竜の骨だ~」なんて声が聞こえてきますが、恐竜ではないものの本物の骨です!!恐竜じゃないのか、、、とがっかりしないでください!この骨格は、これまで地球上に存在した動物の中で最も巨大な動物「シロナガスクジラ」です。しかも、現在国内ではオトナ(成体)で本物の全身骨格が見られるのはなんと海響館だけですからね!

 

 

 多くの人はクジラが人と同じ哺乳類の仲間ということを知っているでしょう。しかし、クジラの祖先が陸上で生活していたといわれてすんなりとイメージできる人はどれくらいいるでしょうか?疑いがちな私は、クジラから陸上生物を想像することができません。そんな人はクジラの骨格の腹と尾の中間くらいに注目してください。小さな二つの骨を見つけることができるはずです。これこそが、陸上にいた証ともいえる骨で、足を支える骨「骨盤」の名残(骨盤痕跡骨)です。海の生活で足を支えるという役割はなくなりましたが、完全になくならず体の中に見ることができるのです。

 

 

 海響館の出口に来るとシロナガスクジラの骨格以外に、バンドウイルカやオウギハクジラの全身骨格、マッコウクジラの下顎骨を見ることができます。まずは、歯に注目してみましょう!私たちヒトの歯は食いちぎるための前歯、そしてもぐもぐと食べる(咀嚼する)奥歯と役割に合わせて形が違います。しかし、バンドウイルカやマッコウクジラはどうか?というと、すべての歯が同じような形です。海の生き物は私たちのようにもぐもぐと食べないため、いろいろな形の歯はいらないのでしょう。

 

 

 次にオウギハクジラの歯に注目してみてください!エサをとるために役に立つのか?という形の歯が左右に1本ずつ生えています。歯が生えているのはオスだけで、メスや子供には歯が生えていないそうなので、エサを獲ったり食べたりするのには関係がなさそうです。

 

 

 ではいつ役立つか?成熟したオスの体表には多くの線状の傷があるそうなので、きっと深い海の中でメスをめぐる激しく熱い闘争が行われていて、その際に歯を使っているのでしょう。ちなみにその闘争によるものなのか、海響館のオウギハクジラの骨格には多くの骨折痕があります。他のオスのオウギハクジラの仲間(成熟したオス)にもこのような骨折の跡が残っているのか?少し調べたところ、、、2個体中2個体で骨折痕がありました。やはり深い海の中、熱く激しい戦いが繰り広げられているのでしょう。

 

 

 人間が美しいと感じる顔の基準の一つに左右対称性があると聞いたことがあります。では、人気者のイルカはどうでしょう。実はイルカを含むハクジラ類はたいてい顔が非対称なんです!!バンドウイルカの頭骨を見てください。同じ部分でも右側の骨が大きいことが分かると思います。なぜ非対称になったのか詳しくはわかりませんが、音の伝わる速度が陸上よりはるかに速い水中で音を利用するにあたり、3次元的にどちらに音源があるかを把握するために役立つと考えられています。

 

 

 ということで2回にわたる骨探はこれで終了。実は骨を見るだけでも生き物の魅力が詰まっています。今度海響館に来られた際は、是非骨探してみてくださいね。

 

魚類展示課 久志本鉄平

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