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カブトガニのことが知りたくて パート2 カブトガニの産卵

 カブトガニは2億年も前からほとんど姿を変えず生き残ってきた生きた化石と呼ばれる生き物です。この下関でも干潟周辺の砂浜にカブトガニが産卵にやってきます。

 

 

 何億年も前からこのように命をつなげてきたのかと想像するだけで何とも言えない特別なものに思えてきます。そんな産卵の瞬間を見たくて毎年6月下旬~7月下旬の産卵時期になると、砂浜をチェックして歩き回ります。下関のカブトガニは大潮~中潮ごろの満潮時が産卵のタイミングになります。直接カブトガニの姿を見つけることが出来れば良いですが、濁っていて姿が見えないことがあります。そんな時は、カブトガニが産卵のために砂を掘ると出る泡が目印になります。

 

 

 なぜ泡が出るかというと、干潮時は干上がってしまい砂と砂の間に空気が閉じ込められ、カブトガニが砂を掘ることでその空気が出てくるためです。このように、姿や泡を確認しながら、ひと夏にどれくらいのカブトガニが砂浜にやってくるのかを確認していたのですが、ある時同じ個体が何度も産卵に来ているのか?それとも一度きりなのか?疑問に思いました。

 

 

 例えば、産卵にきたつがいをのべ334回確認したとして、すべてのつがいが1回の産卵だけであれば、334つがいが産卵に来たことになりますが、4回の産卵があれば、83つがいということになり大きな違いです。これをどうにか調べられないかと考え、甲羅にある付着物や棘の欠損等を記録することで個体を見分けることにしました。

 

 

 ただ、成体になったばかりなのか、甲羅に特徴がない個体もある程度います。見分けるために何か良い方法はないかと考えたところ、魚市場で競り人が発泡スチロールに黒のクレヨンで字を書いているのを思い出し、特徴のない個体の甲羅にはクレヨンで印をつけることにしました。これでいよいよ調査開始です。これまでは産卵に来るつがい数だけを記録すればよかったのですが、個体を見分けるためには甲羅の記録をとる必要があります。透明な海であればそれほど難しくないのですが、カブトガニが産卵に来る場所は雨の多い梅雨時期にはわずか数十センチ先が見えないということもよくあります。そんな中で苦労しながらも、何とか甲羅の特徴的な部分を写真に収めながら調査を行い、その結果ひと夏でのべ212つがいを見分けることができ、325回の産卵を確認しました。それぞれのつがいが何度産卵に来ていたか整理すると、212つがいのうち130つがい(61.3%)は1回のみで、82つがい(38.6%)は複数回の産卵に来ていました。複数回の産卵では60つがい(73.2%)が2回、15つがい(18.3%)が3回、5つがい(6.1%)が4回、2つがい(2.4%)が5回の産卵に来ていたことが分かりました。1回の産卵つがいと2回の産卵つがいの合計は190つがい(89.6%)となり、多くが1~2回の産卵だということが分かりました。でも1回しか産卵に来ないつがいと、5回も産卵に来るつがいにはどんな違いがあるのか、、、また新たな疑問ができてしまいました。この続きはまたいつか、、、

 

魚類展示課 久志本鉄平

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