No,005:マンボウ

No,005:マンボウ  Mola mola (Linnaeus, 1758)

 

 

 マンボウはフグ目マンボウ科に属します。日本周辺に分布するマンボウ科魚類は、マンボウの他にヤリマンボウMasturus lanceolatus (Liénard, 1840)、ウシマンボウMola alexandrini (Ranzani 1839)、クサビフグRanzania laevis (Pennant, 1776)の3種が知られており、そのすべてが山口県で確認されています。

 下関市立しものせき水族館は、世界一のフグ目魚類展示数を誇る水族館で、常に100種以上のフグ目魚類を観察することができます。そのフグコレクションの中で、最も多くの来館者の興味を引くのがマンボウです。その大きさや認知度の高さから、水槽でマンボウを見つけるや否や「マンボウだ!」と言われ、その声を聞かない日はありません。

 「マンボウはフグの仲間です。」と解説すると多くの方に驚かれますが、よく見るとフグ目の共通点があります。フグ目の特徴は、肋骨は通常無く、鰓孔は小さく胸鰭基底前方のみにある、背鰭に棘条がない、腹鰭は強い1棘のみかあるいは全くないなどで、いずれもマンボウに当てはまっています。また遊泳している様子をよく見ると、トラフグは背鰭と臀鰭を左右に振り遊泳していますが、これはマンボウも同様です。ただ、周りのフグ目魚類に比べると何倍もあるその大きさからか同じフグ目魚類とはイメージしにくいかもしれません。

 では、その重さはどのくらいでしょうか。これまで下関市立しものせき水族館には多くのマンボウが搬入されています。その多くは搬入時、もしくは死亡時に外部形態や体重などを計測しています。搬入時と死亡時には栄養状態が異なるため、同じグラフにすると誤差が生じるのですが、これまで記録してきたマンボウの全長と体重をグラフにしたところ、すでに同様の報告の中坪ほか(2006)とよく似たグラフを得ることができました。

 

 

 山口県日本海沿岸の定置網によく入網するマンボウは全長1m前後のものがほとんどで、稀に2m近い大きな個体が入ることもあります。これまでで一番大きい個体では、全長160cmで体重約300kgという記録もありました。これまで採集された最も重いものでは全長272cmで体重2,300kgの記録がありますが、その大きさになるのには飼育下では20年はかかるだろうともいわれています。

 Temminck and Schlegel(1850)のFauna Japonicaにもマンボウの記載があり、「Ukigiウキギ」と呼ばれていることが書かれています。これは浮き木のように水面に浮いているという意味だと思いますが、たしかに水槽でものんびりしている印象が強い方が多いと思います。では海の中ではどうでしょうか。

 マンボウはその巨体もあって、これまでに生態的知見はあまり知られていませんでしたが、Nakamura et al.(2015)ではマンボウの体にビデオカメラ、水温計、深度計などを取り付けた結果が報告されました。それによると、マンボウのエサは深い海にすむクダクラゲ類ということもわかりました。しかし、深い海にいるため、水面に浮いていてはこのエサは食べられません。マンボウはただ浮いているのではなく、クダクラゲ類がいる水深100から200mの深い海と、水面とを1日に10回程度も往復していることがわかりました。往復の理由は、深海で冷えた体を水面で温めていると考えられています。

 マンボウはすぐに死んでしまうという噂がありますが、そんな事実は全くなく、意外とアクティブに遊泳しているようですね。

 

引用文献:
澤井悦郎 (編).2017.マンボウのひみつ.株式会社岩波書店,東京.187pp.
Temminck, C. J. and H. Schlegel. 1850. Pisces, Last Part. In von Siebold, P. F (ed.): Fauna Japonica, sive description animalium quae in itinere per Japoniam susceptor annis 1823-30 collegit, notis observationibus et adumbrationibus illustravit. Lungdunum Batavorum, Leiden, pp. 270-324.
Nakamura, I., Goto, Y and Sato, K. 2015. Ocean sunfish rewarm at the surface after deep excursions to forage for siphonophore. Journal of Animal Ecology, 84: 590–603.
中坪俊之・川地将裕・間野伸宏・廣瀬一美.2006.飼育下および自然環境下におけるマンボウMola molaの成熟評価.水産増殖,55(2):259-264.
中坪俊之.2010.マンボウ類の飼育に関する調査.動物園水族館雑誌,51(3・4):62-73.
中坪俊之・廣瀬一美.2007.飼育下におけるマンボウの成長.水産増殖,55(3):403-407.

 

魚類展示課 園山貴之

 

2019年07月15日