アザラシ移動の話


 今回の主人公は、海響館生まれ海響館育ちオスのゴマフアザラシ「ヒカル」2歳です。
 現在、海響館では3頭のゴマフアザラシがいます。オスの「タル」とメスの「マル」、そして2頭の間に生まれた「ヒカル」です。タルとマルの次の繁殖を考え繁殖期である冬から春にかけて館内2階の展示水槽からアクアシアター裏の水槽に移動していたヒカルを、7月に展示水槽に戻すことになりました。
ゴマフアザラシ「ヒマル」
 移動が決まれば、早速その準備をしなければなりません。移動には木で作った特製のケージを使います。ケージの中にアザラシを収容し館内を移動するのです。ヒカルは好奇心旺盛ですぐに新しい環境や道具になれるのですが、そんなヒカルでもいきなり自分より大きな木箱が水槽にやってきたらさすがにびっくりして警戒してしまいます。そんな状態でヒカルをケージに収容しようとしてもケージに入りたがらず、もし無理にケージに入れようとしても途中で暴れたりなどして作業を安全に進めることはできません。そこで、ヒカルにとってストレスが少なく安全に移動するために、トレーニングが必要なのです。
移動用の特製ゲージ(木製)

 ケージに対する警戒心を徐々に解いていくことが大事なポイントです。まずは、ケージをヒカルの生活スペースにしばらく置くことで、ケージが危険なものではないことを教えてあげます。次に、餌をあげる時に少しずつケージに入る練習を行っていきます。ケージへの警戒心がなくなったら最後に移動本番と同じ状況でヒカルがケージに入る練習を行います。ケージ収容に必要なのはヒカルを誘導するトレーナー1名とケージの蓋を閉めるトレーナー2名の計3名なので、蓋を閉めるトレーナーがいてもヒカルが驚かないようにするのです。このように段階を経てヒカルのケージや人への警戒心を解くことができればいよいよ移動です。

 移動当日の朝はちゃんとケージに入ってくれるのかドキドキしながらヒカルのもとへ行きました。私はその時ケージに蓋をする作業を担当していました。1回目、トレーナーがいつも通りに誘導をしましたが、ヒカルは周りをきょろきょろ見回して落ちつきません。この時、明らかにいつもとは違う雰囲気を感じ取り警戒してしまったようでした。少し時間をあけて再びやってみると今度は辺りをうかがいながらもゆっくりケージに入ってくれました。すぐに蓋を閉め台車やクレーンを使い館内を移動しました。ケージに入る前はあんなに用心していたヒカルでしたが、移動中は暴れることなくケージの隙間から顔を出して外の様子を伺う余裕さえ見られました。
 無事に移動が終わり、ほっと一安心。
 このように、トレーニングは動物たちが安全に生活する為に欠かす事の出来ないものなのです。
 これから親子3頭で仲良く元気に暮らすアザラシにみなさん会いに来てくださいね
引っ越し後のアクアシアター裏の水槽

親子三頭

海獣展示課 鍬崎 賢三
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