キセキのスキャントレーニング

 みなさん、こんにちは。今回は、ちょっと私の自慢話に耳を傾けてください。自慢する程のネタではないかもしれませんが、私にとっては最初で最後の自慢(?)になるかもしれませんので最後までお付き合いください。全国には約70ヶ所の水族館があり沢山のトレーナーがいます。私は、その沢山のトレーナーの中の一人であり、毎日動物トレーニングに励んでいます。そんな私に突然キセキ!!が起きました。そのキセキとは、1週間でイルカの新しい行動を4つもゲットしたことです。そんな素晴らしいキセキを起こしてくれたのは、バンドウイルカの『くるり』。くるりは、平成17年3月に海響館に搬入された推定年齢7歳の若いメスのイルカです。怖がりでわがままな性格を持ち、トレーナーを困らせることもしばしばありますが、頭の回転は早く物覚えはピカイチです。そんなくるりと私とは4年の付き合いですが、ここ1〜2年でようやく彼女の性格を理解しトレーニングも上手く進むようになりました。今回使用したトレーニング方法は「スキャントレーニング」です。スキャントレーニングとは、動物自身に考えさせ、工夫しながら自発する行動を強化する(餌などを与え、求めている行動の頻度を高めていく)、いわば以心伝心ゲームのようなものです。海響館ではこのトレーニング方法を使用し、これまでも動物の沢山の行動を形成してきました。今回、私がスキャントレーニングに取り組んだきっかけは、ある水族館を訪問したところ、その水族館でスキャントレーニングを行っているのを見て、私のトレーニング魂に火がついたのです。
 1日目、音から始めました。くるりは以前から、トレーニングが終了すると私たちに何か訴えたいのか、よく音を出します。まずは、その行動を強化しました。サインを出せば音を出すことを理解させようとしましたが、他の音とごちゃごちゃになってしまい区別させるのに1週間かかりました。この音のトレーニングと平行に、2日目には横回転しながらジャンプする“スピンジャンプ”に的をしぼりました。イルカはよく、他のイルカの真似をするので、年下のパッチが遊びで行うスピンジャンプを利用しようと試みました。しかし、そうはうまくいきません。そういう時に限って、パッチはスピンジャンプをしてくれません。どうしたら良いか考えて、こちらからきっかけを与えると、その日のうちにスピンジャンプを見せてくれました。3日目、昨日の復習をかねてサインを出しましたが全く違う行動を行ってしまい、私はふりだしに戻りました。昨日同様、再度くるりにきっかけを与えると、その瞬間は理解しますが前進しません。私は、くじけることなく繰り返しトレーニングを行い、5日目に、ようやく完全に理解してくれました。6日目、水面近くを泳ぎながら尾びれを水面に上げる“テールアップスイム”。これは時々くるりが見せてくれる行動だったため、1回のトレーニングの時間に完成し、さらには時計回り反時計回りのコースの違いもすぐに理解しました。よって、1回のトレーニングセッションで2つ行動をゲットしました。このように1週間という短い間に新しい行動が4つもできたのは私にとってキセキとしか言えません。こんな経験をさせてくれたくるりに感謝します。
※動画はこちらをクリックしてご覧下さい。
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海獣展示課 河村景子
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