第73回  ゴマフアザラシ「ヒカル」の成長の裏には・・・


 今年の2月25日、「マル」の第二仔として海響館の生き物たちに仲間入りしたゴマフアザラシの赤ちゃん。先日、このアザラシに名前がつきました。その名も「ヒカル」!!いつもキラキラ光っていてほしいからと、8395通もの応募作品の中から選ばれたのです。(応募していただいたみなさん、どうもありがとうございました!)さて、今回はそんな「ヒカル」にまつわるお話を少し紹介したいと思います。

 生まれてからというもの、「ヒカル」はお母さんのお乳をたくさん飲んですくすく育っていました。そして、生後2週間が過ぎると次第にお乳を飲む姿は見られなくなりました。ゴマフアザラシの赤ちゃんは、生まれてから約2〜3週間で離乳(お母さんからお乳をもらわなくなる)をします。どうやら「ヒカル」にもこの離乳の時期が近づいていたようなのです。この頃には、生まれたときには白っぽかった全身の毛も抜け始め、その下から大人と同じゴマフ模様(まだらの模様)の毛が見えていました。そして、3月22日には立派なゴマフ模様の姿に全身に毛が生えそろいました。
 さて、お乳を飲まなくなった赤ちゃんは、今度は魚を食べなければいけません。「ヒカル」のお兄ちゃん「ハル」(2004年2月22日生まれ)の場合は、離乳後10日目くらいで最初の魚を食べたので、私たちは「ヒカル」もそれぐらいで食べ始めるだろうとのんびり構えていました。ところが、10日が過ぎても20日が過ぎても「ヒカル」が魚を食べる気配がないのです。最初はお母さんの「マル」に餌をあげに行くたびに魚を見せていましたが、あまり興味がない様子。野生のアザラシはもちろん生きた魚を食べるので、次はプールにイワシを放してみました。すると!!野生の本能に火がついたのか、「ヒカル」がイワシを追いかけはじめました。よーし、作戦成功!!・・・と思っていたのですが、よく見ると「ヒカル」は一生懸命追いかけるものの、イワシの方が動きが素早く捕まえることができないのです。結局、イワシはお母さんの「マル」が食べてしまいました。しかし、ここであきらめる訳にはいきません。毎日魚を見せたり、生きたイワシやアジをプールに放すことを続けていると、次第に魚を捕まえられるようになってきました。そして、そのうち口の中に入れてもぐもぐするようになったのです。

 ここまでくればもう大丈夫・・と思いきや、今度は魚が食べるものだと気付いていないのか、そこからなかなか飲み込むところまでいきません。もうすぐ離乳から1ヶ月、という頃になっても魚を食べない「ヒカル」。心配した私たちは強制的に魚を食べさせるということも考え始めていました。そして1ヶ月以上が過ぎ、いよいよ私たちの心配が頂点に達した4月23日。「ヒカル」はついに魚を食べたのです!!プールに放したイワシを捕まえ、ゴクリと飲み込んだのでした。 本当に、やっと、やっと、やっと食べてくれた!!という気持ちで私たちスタッフはほっと胸をなでおろしたのです。それからは次第に食べる量も増え、全てが順調、めでたしめでたしと思っていたのですが・・・魚を食べるようになって1週間が過ぎた頃、「ヒカル」の食欲が急に落ちてきたのです。どうしたことかと心配した私たちが思い当たったのは、“「ヒカル」のウンチを見ていない”ということでした。1ヶ月もの間何も食べていなかった「ヒカル」の消化器が正常に働いていない可能性があったのです。消化器が働いていなければ、食べた魚の栄養を吸収することができませんし、ウンチとして排出されなければ、おなかの中で詰まってしまって大変なことになります。そこで、消化を助ける薬を魚に詰めて与えることにし、さらに排便を確認するためスタッフが交代で「ヒカル」の様子を観察することになりました。観察を開始してから3日が経っても「ヒカル」のウンチは確認できず、またまた私たちの心配はつのります。今度は浣腸するしかないか?と話していたその時、ついに「ヒカル」のウンチを発見することができたのです!!それからはまた「ヒカル」の食欲も上がり、今では1日に約3kgの魚をぺろりと食べられるようになりました。
全身白い毛で覆われたヒカル
全身白い毛で覆われたヒカル
真っ黒な瞳
真っ黒な瞳
トレーナーの手から魚を食べるヒカル
トレーナーの手から魚を食べるヒカル

まだまだあどけない様子のヒカル
まだまだあどけない様子のヒカル

 「ヒカル」はこれからもたくさんの魚を食べて、どんどん大きくなってくれるはずです。たくさん心配もさせられましたが、その分元気に成長を続けてくれていることがなにより嬉しく思えるのです。今も毎日成長を続けている小さなアザラシ「ヒカル」を、みなさんも暖かく見守ってあげてくださいね。


海獣展示課 村本 ももよ
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