第68回 動物たちの採血

 皆さんこんにちは!今回のイルカ君アシカ君では動物たちの健康管理の一つである血液検査のための採血(血液を採ること)を取り上げます。バンドウイルカはだいたい月に一回、スナメリひびきでは月に二回、アシカ・アザラシ・ペンギンでは年に数回のペースで採血を行っています。

 それでは、どのように採血をするのかご紹介しましょう。海響館ではほとんどの場合、トレーニングにより採血を行っています。そうすることで、動物を押さえつける必要がなく、安全でストレスなく採血ができるのです。とはいっても、いきなり針を刺すと動物たちはもちろん嫌がります。そこで、採血のためのトレーニングは、多くの段階を経て少しずつ進歩させていきます。まず最初に必要なのは採血を行う姿勢づくりからです。うまく誘導し、その姿勢ができるようになったら、次に針を刺す場所を少しずつ触ります。イルカであれば尾鰭、アシカやアザラシでは後肢です。最初は違和感を感じる動物もいるのですが、徐々に慣れてくればリラックスした姿勢を保つことができます。次に採血する場所を指でトントンと刺激し、爪を立てるなどして少しずつ刺激を強くしていきます。時には嫌がり体を動かして逃げようとする事もありますが、毎日根気強く少しずつトレーニングを行います。更に慣れてくれば、爪楊枝などの尖ったものを使って少しずつ針に近い刺激を与えます。このような刺激にも姿勢を保つことができたら、実際に注射針を使って採血する場所を刺します。
海響館のほとんどのイルカたちは、トレーニングによる採血ができています。イルカでは尾鰭にある血管から採血するので、写真1のような採血姿勢に誘導します。バンドウイルカの場合、体の色が黒いので血管を簡単に見つけることはできません。しかし、写真2の矢印の先をよくよく見てください。なんとなく見える一本の線があります。この線がイルカの尾鰭を通る太い血管で、注射針を刺すところです。この線が見えやすい個体、見えにくい個体もいますが、正確にその線(血管)を見つけ針を刺します。もしも、血管に当てることができず血液が採れない場合、針を刺しなおす事になり動物に負担をかけてしまいます。そのため、できるだけ一度で血管に当てる事が重要となるのです。アシカの場合、写真3のような採血姿勢に誘導し、写真4のように後肢の鰭の間から採血を行います。しかし、イルカよりもさらに血管は見えにくく、一度で血管にあてる事は困難です。そしてアザラシの場合、血管が集まっている後肢の内側(写真5)から採血を行いますが、血管を見つける事は不可能です。そのため、どのあたりを血管が通っているのかをイメージしながら注射針を刺します。正しいイメージを想像できていれば、一度で血管に当てることができます。
写真1 イルカの採血姿勢
写真1 イルカの採血姿勢
写真2 尾びれに通る血管
写真2 尾びれに通る血管
写真3 アシカの採血姿勢
写真3 アシカの採血姿勢
写真4 アシカでの採血の様子
写真4 アシカでの採血の様子
写真5 アザラシの後肢
写真5 アザラシの後肢


 ではなぜ定期的に採血を行うのでしょうか?採血で得られた血液を分析する事により、体内の状態を示す様々な値が得られます。その値を見ることで、病気の予防や治療に役立ちます。動物が病気になったとき、血液の値から体の中の悪い部分がわかります。また、病気の診断以外にも役立つ事があります。オスとメスそれぞれ特有のホルモンを測定する事によって、動物の性成熟や繁殖時期、さらには妊娠判定などにも利用することができます。動物種ごとに血液の性状はかなり異なり、得られる値に大きな違いがあります。更に同じ種類の動物でも各個体にも違いがあり、個体によって正常値も異なります。そのため定期的に採血を行い、個体ごとの正常値を把握することで、個体ごとの健康管理となるのです。
 このように採血は技術的に困難な場合もありますが、健康管理を行ううえでの大切な検査の一つです。これからも、動物たちが健康でより豊かな生活を送れるよう、スタッフ一同がんばっていきます!みなさん元気一杯の動物たちを是非見に来てください!!

海獣展示課 進藤 英朗
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