第6回 イルカはお話するの?
 今やアイドル的存在の海のほ乳類「イルカ」。テレビ番組や多くの書物でも、いろいろな視点から見たイルカ達の素顔を取り上げ、放送されたり紹介されたりしています。みなさんの中にも身近にある水族館で、その愛らしい顔をして近寄ってきては水をかけたり軽くかんでくる彼らに魅了された人も数多くいるのではないでしょうか?しかし、人間と同じほ乳類といえども、彼らが生活しているのは水の中。そのようなことから、多くの素朴な疑問が浮かび上がってきます。「イルカはどのようにして眠っているのだろう?」「イルカはどのようにして呼吸しているのだろう?」などなど。今回は、そんな疑問の中で「イルカはお話しするの?」という疑問にふれてみたいと思います。

 みなさんが水族館でよく見られるイルカは、ほとんどがバンドウイルカという種類のイルカです。とても好奇心旺盛で、親しみやすいイルカとして知られています。自然界でも、単独では行動せず数十頭(時には数百頭)の群をつくって仲間同士でたくさんふれあい、共に助け合って生活をしています。この“群をつくって”という所に着目してみてください。私たち人間もそれぞれの家族、仲間同士でたくさん触れ合い、共に助け合って生活しています。その生活の中で私たちは、いろいろな意味を持ったたくさんの会話を交わし、物事を伝えあっています。イルカ達も、海の中で様々な会話を交わし、物事を伝えあっています。会話を交わすと言っても、相手の話したい事って頭の中で簡単に想像できるものではありませんよね。ではどうやって、音を発したり、音を聞き取ったりしているのでしょうか?

バンドウイルカ頭部イラスト

 まず、音を発する仕組みについて見てみましょう。私たちはのどにある声帯(せいたい)を使って音を発しますが、イルカには声帯がありません。その為イルカ達は、‘鼻道(びどう)’にある‘気嚢(きのう)’という空気の袋が、息を吸い込む流れを使って振動させ様々な音を作り出すのです。
 発せられた音は、イルカの頭部内にあるメロンという脂肪質の器官によって、一方向にあつめられ、するどいビームとなって前方に発射されます。

 次ぎに、音を聞く仕組みについて説明しましょう。イルカ達は、人間と同じ耳をしっかり持っています。目の後ろあたりをよく見てみてください。針で刺したような小さなくぼみがあります。それがイルカ達の耳なのです。しかし、このくぼみから伸びている耳の穴(外耳道(がいじどう))は、ろう状の耳あかのせいでふさがっていっるため、耳から音を聞き取ることが出来ません。ずばり、イルカ達はアゴで音を聞き取っているのです。何とも不思議な気がしますが、イルカ達の下あごの骨の中には、音響脂肪(おんきょうしぼう)と呼ばれる音を伝えやすい脂肪組織があることが分かっています。水中で伝わる様々な音は、下あごの骨の中の脂肪層を通って鼓膜(こまく)・中耳へ伝わり、さらに内耳へと伝わって音を聞いているのです。(イルカの音の感受性に関する研究の中で、外耳道のある目の後ろの部分では音に対する感度が鈍く、下あごの側面では感度が大変鋭いという興味深い結果が得られています。この結果は、イルカが下あごで音をキャッチしているという強い理由とされています。)

エコロケーション(音響定位)

 イルカなどを紹介する番組などで良く「エコロケーション」って耳にしますよね?この「エコロケーション」を漢字で書くと「反響定位(はんきょうていい)」と表します。つまり、「自らが発した超音波がエサなどの物に当たって帰ってきたエコー(反響)を聴くことによって、その形や大きさを知ることができる(定位)システム」のことを指しているのです。「エコロケーション」は、暗くて遠くもあまりよく見ることが出来ない海の中で生活していくためにイルカ達が獲得した大きな武器といえるでしょう。その能力はとても正確で、時には小さな針さえ知ることが出来るといわれています。またイルカ達は、発する音の周波数(※2)を知りたい物に対してすばやくあわせることによって、より正確にそれらの物を知ることが出来ます。

 ここまでイルカ達の音を発する仕組み、音を聴き取る仕組みをご紹介してきました。しかし、まだまだ分かっていないことが多く、より確かなメカニズムの解明を追い求めている研究者も少なくありません。
 最後に私もこの文章を書くに当たって参考にさせていただいた本を紹介します。興味のある人は是非ふれてみてください。
 ■「イルカはなぜ鳴くのか?」(著:赤松友成)
 ■「クジラの謎イルカの秘密」(著:宮崎信之) 

※1鼻道(びどう)頭の上にある噴気孔から肺までをつなぐ管。
※2周波数(しゅうはすう)音の波が一秒間に振動する回数

海獣展示課 宮本 あゆみ


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