第59回 台風の 置き土産!?

 皆さんこんにちは。今回は海響館ニュースをお伝えします。そのニュースは、1本の電話から始まりました。西日本を大型の台風14号が襲った翌日の9月7日、午後7時40分、山口県宇部市の海岸でイルカが砂浜に打ち上がっている(ライブストランディング)と現地警察署からの通報でした。

 どういった状況か分からない為、様々な準備を整え現地に向かうと、浅瀬で漁師さんや地元住民の方々が1頭のイルカを抱いてくれていました。現地の方の話によると、午後6時ごろ砂浜(東経
130度19分、北緯33度57分)でイルカが打ち上げられているのを発見し、何度か沖に帰そうとしたがどうしても砂浜に戻ってきてしまうとのことです。そこで警察に通報し、警察から海響館に連絡が入ったということでした(写真1)。
状況が把握できたのでイルカ専用担架の登場です。これを使えば人が海に入ってイルカを抱きかかえる必要がなく、イルカの体も安定した状態に保つことができます(写真2)。イルカが落ち着くのを確認できたので、次は健康チェックと情報収集のために体長測定・体温測定・採血を行いました。その結果、種類はバンドウイルカで体長が278cmのオス、推定体重は250kg、体温は36.9度(正常)、体に大きな傷はなく衰弱もみられませんでした(写真3)。
ここまでは順調ですが、問題はここからです!このイルカをこの先どうするかを考えなければなりません。考えられるのは2通りあり、1つは海響館に連れて帰りしばらくの間様子をみる、もう1つはそのまま沖へ放すことです。後者を選ぶとしても今すぐ行うか、夜が明けてから行うかを考えなければなりません。どの方法を選択するかはこのイルカにとって最適な方法でなければなりません。
海響館が下した判断は、大きな傷もなく、健康そうで呼吸も安定していたため、このまま夜が明けるのを待たず沖へ放すことになりました。現地の漁師さんに相談したところ、すぐに船を用意してくれたので、まずは船の横にイルカを乗せた担架を固定し、再度イルカが砂浜の方に戻ってこないように、できるだけ沖へと向かいました(写真4)。ゆっくり走ること約20分、水深約5mで岸から3.5km離れた場所(東経131度19分、北緯33度56分)、最初に発見されてからおよそ5時間後の午後11時20分にようやくイルカを沖へ放すことが出来ました。暗闇の中力強いイルカの呼吸の音を聞いた瞬間、長い緊張から解き放たれホッと胸をなで下ろしました(写真5)。
私たちはそのイルカが再び砂浜に打ち上げられているのではないかと心配していましたが、今日現在(9月25日)イルカを目撃したという通報はないので、きっとどこかの海で元気に泳いでいる事だと思います。仲間と合流できたことを祈るばかりです。
クジラやイルカが海岸に打ち上がる原因は様々あるといわれていますが、もしかすると今回は台風14号の影響で海が荒れ、砂浜に打ち上がったのかもしれませんね。
写真1 地元住民による救助
写真2 担架で保定
写真3 健康チェック
写真4 担架に乗って沖へ移動
写真5 沖でリリース

 今回は現地の方々の迅速な対応と協力のおかげで上手くイルカを沖に放すこができました。この場を借りて、協力して頂いた床波漁協の方々と地元住民の方々にお礼申し上げます。また、今度もしこのようにイルカやクジラが砂浜に打ち上がっているのを発見した時は海響館にすぐに連絡してください。皆さんのご協力をお願いします。

海獣展示課 榊 麻有
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