第29回 会話できることの素晴らしさ

 今回は、少し小難しく、突っ込んだ話題について哲学的に進めていきたいと思います。でも、そんなに難しく捉える必要はありません。なにせ、いつも私達が行っていることですからね。

 私達が普段、なにげなしに行っている会話、皆さんは、この“会話”について考えてみたことはありますか?私はこの“会話”ということについてよく考えています。普段から当たり前のように行われているので、何をあえて論じているのだ、と怒られてしまうかもしれませんが、会話というのは、素晴らしいことなのですよ。会話をすることにより、相手の意志、気持ち、感情、などが直接伝わってきます。そしてコミュニケーションを図ることができるのです。

 会話を行う、と一言で言っても方法は様々で、言葉を用いた会話、身振り手振りを用いたボディーランゲージ、観察だけによる会話、相手の目を見て会話をするなど、沢山あります。

 突然ですが、私達トレーナーは動物と会話をすることができるんですよ。驚く人もいると思いますが、本当なんですよ。犬や猫などの動物を飼っている人たちは私の意味することが分かると思います。人間同士の会話の場合、多くの場面において言語を用います。動物達との会話には、私達が一般的に用いている言語を用いることはできません。
目と目でコミュニケーションをはかる
 では、どのようにして会話を行うのか、またコミュニケーションを図っているのでしょう。私達トレーナーは動物達と会話を行う時に最も多く用いられるのがボディーランゲージです。その他には動物達の行動を見て、相手の表情や感情を読みとったり、眼を見てその時の意志を読みとります。

 水族館でトレーナーさんが動物達に色々な合図を出しているのを見たことがありませんか?この合図がコミュニケーションであり、会話なのです。イルカのジャンプを一つの例に挙げてみましょう。まず、イルカたちの表情を読みとり、ジャンプできる状態にあるのかどうかを判断します。できる状態であれば、ジャンプの合図を見せると、イルカはその合図がジャンプであることを理解して、‘ゴー’の合図を待つのです。最後に‘ゴー’の合図が出されるとトレーナーの元から出発してジャンプを行うのです。このように、動物達とトレーナーの間には多くの会話が成されているのです。時には、表情が曇っていたり、動物達の動きが良くないとき、それは動物達からの「今はジャンプできる状態ではない」とか、「少し待ってくれ!」という意思表示であり、トレーナーは何故そのような意思表示をするのか、原因を探るのです。

 私達がイルカさんや、アシカさんの前を通ったり、何気なく眺めていると、動物の方からコンタクトをとってきます。時には、「こんなことができるんだよ!見て見て!」とか、「そこに置いてあるおもちゃを取ってよ」など、色々なことを話しかけてきます。その会話に何も反応しないと、「じゃあ、これはどう?」と、再コンタクトをとってきたり、それでも反応しないときは、怒って水をかけたり、泳ぎ去ってしまうこともあります。
おもちゃで遊ぶイルカ

 この会話、コミュニケーションは双方向であってお互いの意志を汲み取りあうことが重要なのです。決して、一方通行ではだめなのです。私達人間が動物達に色々なことを要求し、動物達も私達に色々なことを要求します。動物は私達に身振り、手振り、音、色々な表情を使ってコンタクトをとってきます。言語なしの双方向のコミュニケーションが成り立つとき、本当に素晴らしい世界が広がります。海響館に来たときは、是非一度動物達に声を掛けてみて下さい。きっと彼らは何か答えてくれますよ。

海獣展示課 岡崎 哲也
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