第14回 海響館の海獣トレーニング

目次
1.目標と目的
2.動物行動への導入
3.動物トレーニングへの導入
4.海響館で行われているトレーニング方法
 4.1ポジティブかつネガティブな強化
 4.2オペラントコンディショニング
 4.3スキャントレーニング
 4.4オブザベイショナルラーニング
 4.5シグナルとキュー
5.結論
6.参考文献

1.目的と目標
 海響館で海獣を展示する目的はお客様に動物や彼らが素晴らしい能力の持ち主であることを理解していただくためである。この目的は専門的に確実にかつ、みなさまに理解していただきやすい方法で彼らの能力を表現することができる海獣のプレゼンテーション(ショー)という形を用いて理解していただけると思います。

 海響館では水生生物が自然界で生活しているその環境と、他の野生生物と一緒に海獣類を見て学べる機会をお客様に提供します。最終的に、このことは日本や世界の国々を通して海獣類との交流成果を生む手助けとなるでしょう。
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2.動物行動への導入
 私たちは刺激に対して反応する事や、認識していることや、体の動きなどといった動物が行うことすべてを“動物の行動”と呼んでいます。泳いだり、眠ったり、食べたり、呼吸するといったこれらすべての例えは動物の行動なのです。トレーナーの目的のために、トレーナーが名付けまた呼ばれている動物の動きも行動と呼ばれます。

  動物は餌を見つける、捕食者から逃げる、繁殖するなどといった本来重要なことを行います。自然界の若い動物たちは生息環境の危険性について学ばなければならなく、またどのように餌をとるのか、鯨類グループの中にある階級についても学ばなければなりません。したがって、新しい行動を学んでいくことも海獣類にとって自然なことなのです。イルカのような野生の動物が水族館に来たときに、その多くの動物の自然行動は変化していき、新しい行動も学んでいきます。その変化は徐々に起こり、トレーナーによって慎重に導かれていきます。
トレーナーの上を
ジャンプするイルカ
  海響館で新しい動物に教えていくことで一番始めにかつ最も重要なことは、人間のトレーナーを怖がらないということです。動物がこの自然本能を乗り越えたとき、そのときから他の対話式の行動トレーニングが始まります。
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3.動物トレーニングへの導入
イルカに乗るトレーナー
 海響館での動物トレーニングのすべては“私たちが望んでいる行動をポジティブ(積極的)に強化し、私たちが望んでいない行動はポジティブに強化しない”ということに基づいています。

 世界中の多くの人々が独自の環境、視点や経験に頼って様々なスタイルでトレーニングを定義しています。海響館ではトレーニングを動物とトレーニングスタッフとの間のコミュニケーションの形態と定義しています。このコミュニケーションはトレーナーと動物たちとの相互関係という状態を含んでおり、新しい行動を教えることや動物たちからもまた学ぶのです。
 新しい動物が新たな環境に慣れたときから、どのように新しい行動を学んでほしいのかということを教え始めます。このことを達成するために、動物にとって重要なことは給餌やトレーニングを行っている間に動物たちの意識をトレーナーに集中させることなのです。遊び時間もまた重要で、動物たちにいつもとは違う道具(または、おもちゃ)を与えることで、そのおもちゃを使って新しいゲームを創り出していき行動が活発になっていきます。このことは、エサを使わずに彼らの行動を強化していくときにも用いられる方法なのです。

 “なぜ”動物をトレーニング行うのか、これを理解することもまた重要なことなのです。海響館で私たちが動物をトレーニングする主な理由は1)精神的な刺激、2)肉体の運動、3)動物の健康のためです。トレーニングは刺激的かつ充実した水族館生活を動物たちに与えるという意味があります。
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4.海響館で行われているトレーニング方法
 海響館では3つの基本的なトレーニング方法を用いています。まず始めに、私たちが何をしたいかを伝えるために、オペラント条件付けという手法を用います。第2にトレーナーが今までに全く条件付けたことのない(教えたことのない)ことであっても、動物が自ら考え出した自然に起こる行動をポジティブに強化していくこともあります。このトレーニング方法を“スキャントレーニング”と呼んでいます。
片手倒立
 さらに、動物たちはお互いを見て学んでいき、もし他の動物の行動を真似したならば、それは強化されます。この方法をオブザベイショナルラーニング(観察に基づく学習)と呼んでいます。
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4.1 ポジティブかつネガティブな強化
 トレーニングを行う際にポジティブかつネガティブな強化方法を用います。条件付けられたポジティブにさせる強化物はホイッスルの音であり、ブリッジとしてトレーニングに用いられます。ブリッジは動物が水族館に初めて来たときからエサと結びつけられ、条件付けられています。これはキュー(合図)と動物の反応が正しい場合に使われます。

 条件付けられたネガティブにさせる刺激は鉄製の音で造る音であり、トレーニング中にデルタとして用いられます。この音はトレーニングの後半段階において教えられ、エサは無い状況またはトレーナーから他の反応として結びつけられます。デルタは動物の反応が正しくないことを示すのに便利な方法なのです。

 動物トレーニングにおいてブリッジやデルタといった刺激を使うことはキューに対する反応の後でトレーナーが動物にイエスまたはノーを伝えるための手段なのです。
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4.2 オペラントコンディショニング
 トレーナーからキューが出された後にポジティブに強化されている行動とサインまたはキューが行動と結びつけられ、オペラントコンディショニングとはこういった学習方法を表現するのに使われる言葉です。この方法の結果、動物はキューに対する正しい反応が強化され、これらのことによりキューが繰り返し出されたとき、その行動を繰り返すようになるのです。 もしキューに対する動物の反応が正しくないときはデルタ刺激が使われ、また正しくない反応にはポジティブな強化は行われません。
海響館でアシカの上をジャンプするイルカ
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4.3 スキャントレーニング
 スキャン(取り込む)トレーニングは動物たちが工夫しながら遊んでいるときの行動を強化していくことで成し遂げられていきます。動物たちは今強化された行動を繰り返すことを直ぐに理解します。スキャントレーニングを行っている間にその行動が普通に繰り返されるようになれば、その行動と合図とを結びつけ、合図が出された後の行動のみを強化していきます。動物はまず始めに合図が出されない限り、その行動が強化されることはありません。 動物が新しい行動を引き出し、または以前に条件付けられた行動が良いように変化したとき、他の合図を見せるその時まで新しい行動を強化していきます。新しい行動やおもちゃと共にゲームを楽しむことを考え続けるために動物を強化していく強化方法でもあります。
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4.4 オブザベイショナルラーニング
 観察に基づく学習は動物が互いの行動を何度も観て学んでいくことで起こります。イルカはトレーニング中や遊んでいる間に仲間の行動をよく真似します。動物が初めてこれを行った時、互いに真似し合うことを続けて欲しい、という事象を含んだ新たな行動を学ぶために、その行動はポジティブに強化されます。
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4.5 シグナルとキュー
私たちが望んでいる行動をイルカやアシカが理解し学習しているとき、その行動をサインや合図と結びつけていきます。合図と結びつけることは、行動シェイピングの段階で早く行われ、またターゲットのような道具の提示は合図として条件付けられません。例えば、ウォーターハードルのスイッチを入れることは、その次の行動がいつもウォーターハードルジャンプになるということではないのです。 合図はハンドサインまたは音であり、動物は特定の行動と結びつけることを学びます。この段階にまで来たとき、動物に合図が出された後の行動を強化するのみです。
トレーナーは目標物として手を使う トレーナーはハンドサインを使いイルカが特定の行動をするきっかけを与える
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5. 結論
 海響館での動物トレーニングは一歩ずつ達成されていきます。新しい行動を作り始める前に、まず完成型の行動がどのようなもので、主なものは何かを確認します。一度トレーナーが頭の中に完成型を描けたら、その完成型に向かって動物をステップ毎にポジティブに強化していきます。難易度の減少やトレーナーの経験により新しい行動が完成までに僅か数分、または何カ月以上もかかることもあります。

 エサはトレーナーが使うブリッジに続くポジティブにさせる強化物としていつも使われる訳ではありません。何度も、他のポジティブにさせる強化物はブリッジとして結びつけられ、また新たな条件付けられた強化物となります。それらはおもちゃであったり、トレーナーと短時間でも一緒に遊ぶことであったり、動物がポジティブだと思うことがあれば何でもいいのです。

 海響館において、トレーニングはトレーナーと動物との間で完璧に対話を行う方法なのです。たいていの場合、動物が見せる行動のクオリティーはトレーナーの経験やトレーニングに対する認知度を反映しています。
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6. 参考文献
Holland, J.G. and Skinner, B.F. (1961). "The Analysis of Behavior: A program for self instruction." McGraw-Hill Book Company Inc. USA.

Pepper, R.L. and Defran, R.H. (1975) "Dolphin Trainers Handbook, Part 1 Basic Training." NUC, San Diego, CA. USA. 52pp.

Ramirez, K. and John G. Shedd Aquarium. (1999). "Animal Training: Successful Animal management through positive reinforcement."USA. 578pp
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海獣展示課 課長 グラント エイブル
(訳:岡崎 哲也)