あくあはーつ通信

vol.234 新種?:インカアザラシ

「お母さん インカアザラシがいるよ~」と男の子の大きな声。
「あれもペンギンの仲間よ」とお母さん。

 

 学校も春休みに入り最初の日曜日のことだった。多くの子供さんも見えている。ペンギン村の入口には、村の住民(住鳥?)全種が写真入りで展示されている。それでこの村を案内するときは、いつもここで村のメンバーを簡単に紹介することにしているが、お母さんと男の子の会話は、たまたまこの前を通りかかったときに耳に入ってきた。

 インカアザラシは、男の子が読み間違ったらしいが、大人でもよくあることでほほえましい感じがしたのだが、続くお母さんの会話にはつい立ち止まってしまった。

 

 展示されているペンギンの写真は、南極大陸周辺の亜南極を生息域としているキング、ジェンツー、マカロニ、イワトビの4種と、温帯域のフンボルトの各ペンギン達。男の子が叫んだ「インカアザラシ」(実は鳥類:インカアジサシ)はイワトビペンギンの隣に小さく描かれていている。

 

 お母さんの名誉回復のためと言うわけではないが、インカアジサシも、ペンギンも鳥類の範疇では仲間には違いない。ペンギン村に来たという先入観があって、ここにいる生き物は全てペンギンと思い込んでしまったのかも知れない。

 黒っぽくサイズも小さいので、一見ペンギンの仲間に見えたのだろう。

 

 以前、このインカアジサシが空中給餌で、ハチドリの様にホバリングしているのを見て、「あっ、ペンギンが飛んでるぅ~。」と叫んだ子供さんもいたが、ペンギンが、水中へ飛び込んだり、岩場へ飛びあがったり、あちらこちらにうろうろしている環境ではよく間違えられる鳥である。

 

 インカアジサシは、亜南極地帯というより、ペルー・チリ北部の太平洋沿岸付近に生息して、冬を過ごすのに熱帯のエクアドル付近まで北上するらしい。まさに名前の通りインカの文化が栄えた付近だ。繁殖の習性が特異で、砂浜の地中の穴に産卵するそうだ。閉鎖空間の亜南極水槽で展示されているのは、鳥が逃げ出さないためなのだろうか?

 

 おせっかいかと思いながらもお母さんと男の子には、インカアジサシはカモメの仲間で、コガタペンギンと同じぐらいのサイズだが、体重は1/5ほどで軽いことや、ペンギン村の他の種についても少し伝えた。

 その日の夕食の家族団欒がどんな話題になったのか気になるところだが、お母さんの立場になれば、話さなかった方が良かったのか、それとも男の子の為に話した方が良かったのか、ハムレットではないが、That is the question.

 

 ところで、南極のアザラシといえば、ウエッデルアザラシやヒョウアザラシ、巨大なミナミゾウアザラシ等が浮かぶが、その他にインカアジサシと同じ生息域のアザラシはいるのだろうか。出来れば、男の子の名誉のために新種「インカアザラシ」を期待したいところ。

解説ボランティア:唐櫃 山人

2017年04月21日