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第88回 とことん知ろう フグ 〜歯編〜

 海響館には、世界中から集められたたくさんのフグ目の仲間たちが展示されています。フグ目といっても、その体の形や大きさは千差万別。「本当にこれ同じフグの仲間なの?」って思わず首をかしげたくなるほど多様性にとんでいるのです。そんなフグたち、口の中にある歯もそれぞれグループごとに実に特徴的な構造をしています。今回はそんなフグの歯について紹介したいと思います。
 まず、フグというと多くの方が思い浮かべるのは高級魚として名高い「トラフグなどのフグ科のフグたちではないでしょうか?このグループは。上に二枚・下に二枚、合計4枚の板状の歯を持っています。この歯はとても頑丈で、トラフグなどの場合、漁師の方が使っている直径2mm程度のワイヤーぐらいなら簡単にかみ切ってしまうほどなのです。
トラフグ
 小さなフグたちでもその力は馬鹿にできません。この前、ゴールデンパッファーという体長5cm程度の小さな淡水フグの水槽を掃除していたときのこと。いつも通りに水槽に手を入れてアクリル表面についたこけを落としていたら、“!?”なにか指先を思いっきりつねられたような妙な激痛が走ったのです。よく見てみると、血が水槽の中にゆらゆらと漂い広がっていっているではありませんか!あの痛みは、ゴールデンパッファーが私の指にガブッとかみついた痛みだったのです。いつもはかるくカプってかむことはあっても、そんなに深くかんでくることはないのです。その日は、よほどおなかが減っていたのか、私の指がおいしそうだったのか、機嫌が悪かったのかともかく虫の居所が悪かったのでしょう。なにはともあれ、その傷は予想以上に鋭く深く切れていたため、その後一週間程度私を苦しめ続けたのでした・・・。
モヨウフグゴールデンパッファー
 そんな丈夫な歯ですが、水族館などで管理された状態で飼育されていると、思わぬ弊害をフグたち自身に及ぼすことがあります。それは、歯がのびすぎてしまうことです。自然環境下では、ふつうにすりへっていく歯も、水槽の中では固いものをかじる機会がなく、どんどん伸びていってしまうのです。歯が伸びすぎると、口がうまく閉じられなくなったり餌が食べられなくなったりすることがあります。それが原因で極端にやせてしまい、最悪の場合死に至ることもあるのです。水族館では、歯伸び対策として時には貝などの固いものをかじらせるように工夫はしていますが、やはりそれだけでは不十分なようで、時には歯が伸びすぎたフグがでてくることがあります。私自身、海水に生息するフグで歯が伸びすぎたことが原因で餌が食べられなくなったフグをみたことがないのですが、汽水や淡水に生息するフグたちではよく起こります。先述のゴールデンパッファーも歯が伸びやすい種類の一つです。伸びすぎてしまった場合どうするかというと、小さなはさみやニッパーで伸びすぎた部分の歯をちょきんときってしまいます。最初は恐々なのですが、やってみると意外と簡単!ただ、相手は水の中の生き物でなおかつ変温動物ですから、じかに私たちが手でフグたちの体をつかんでしまうとフグの体の表面がやけどしてしまいます。ですから、必ず飼育水で浸したタオルなどでつつんであげてからそっと体を固定して歯を切ります。
 ハリセンボンの仲間たちは、上あごに1枚・下あごに1枚、合計2枚の板状の歯を持っています。この歯もかなり頑丈でから付きのアサリを与えてもバリバリと音をたてながらかみ砕いて食べてしまいます。
 マンボウは、ハリセンボンと同じで上あごに1枚・下あごに1枚、合計二枚の板状の歯を持っています。こちらの歯はあまり丈夫ではなく、餌をかみ砕くことはできません。ですから、マンボウはエサを吸い込むようにして食べます。
 体を硬い甲羅上のウロコで覆われたハコフグやイトマキフグの仲間たちの歯は、上下に各10本程度の歯が並んでいます。
 カワハギやモンガラカワハギの仲間たちは、ふつう円すい状または門歯状(犬の歯のようにとがった歯)が上下のあごにそれぞれ1〜2列ずつ並んでいます。このグループの仲間たちで変わった歯を持っているのが、「アカモンガラ」です。口元をみるとまるでドラキュラが血をすすった直後のような真っ赤な歯がのぞいています。“体の色は紺色なのにどうしてアカモンガラなの?”って不思議に思っていたのですが、この歯をみて納得しました。きっと名前を付けた人も、この歯がもっとも印象に残ったから紺色のモンガラなのに“アカモンガラ”ってつけたのでしょうね。
 今度、海響館でフグを見る時、是非歯も注目して観察してみてください。歯を見るだけでだいたいどのグループのフグかわかるようになったら、あなたもフグ博士の仲間入りですよ!
ヒトヅラハリセンボン
マンボウ
イソモンガラ
アカモンガラ

魚類展示課 杉山 由貴子

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