[最新一覧へ]

第87回 魚たちはこうしてやってきます。〜ミズダコ編〜 

 2005年4月20日早朝、兵庫県の城崎マリンワールドに、ある巨大生物を受け取りに4トン活魚車で出張に行きました。
 今回の生物は世界最大のタコであり、大きな個体では腕を広げると約3mにもなる、「ミズダコ」です。ときには20cm近くもあるカニを襲って食べることもあるミズダコですが、メスは産卵すると餌も食べずに付きっきりで卵を守ります。そして卵から稚ダコが孵化するのを見届けると死んでしまうという繊細な一面もあるんです。 ミズダコ
 下関を出発する早朝に地震がありましたが中国自動車道では影響もなく、東へとひた走る我々が休憩がてら立ち寄ったのは、鳥取県のある港の近くのお土産物屋さん。主な商品は水産加工品です。魚屋さんも併設してありました。「このあたりではどんな魚が捕れるのかな?」と魚類展示課の血が騒ぎます。 運転中。一路、城崎へ
 ふと店先を覗くとひときわ大きな箱の中に、はみ出さんばかりの大きなお腹が・・・。ミズダコです!!(タコの頭にあたる部分は両目の間にあるので、目から上の部分はお腹になるんですよ。)お店の方にどうやって食べるのかと聞いたところ、煮ても焼いても、生でもイケるそうです。あまりの大きさにあっけにとられていたのですが、お店の人曰くまだ小さい方だということで、再び血が騒ぎだしました。
 休憩を終えた我々はさらにトラックを東へ走らせ、城崎マリンワールドへ到着したのは夕方でした。そこで現地スタッフと打ち合わせをし、トラックに海水を入れました。あとは翌日に備えて早めの就寝です・・・Zzzz。
 4月21日午前8:00。いよいよ生きたミズダコとのご対面です。城崎マリンワールドのスタッフによると、今回の3個体のうち1個体は水族館にやってきて間もないため、おとなしくカゴに入ってくれないというのです。なぜカゴに入れる必要があるのかというと、タコの仲間は縄張り意識がとても強く、お互いの姿を見るとボロボロになるまでケンカをするのです。そのため、トラックや予備水槽では1個体ずつカゴに入れて分けるのです。
 ま、何とかなるだろう。ということでミズダコをトラックまで持って来ていただくと・・・。デカいっ!!!想像をはるかに超えた大きさではないですか!海の中でケンカをしても全く勝てそうにありません。
私達の愛車 4トントラック
タコをカゴの中へ
最後の一匹をカゴへ
 とりあえず、最初にカゴに入った2個体をスムーズにトラックへ移しました。しかし、まだ安心できません。そう問題は皮肉にも1番大きなあの個体です。素直にカゴに入ってくれるのでしょうか!?
 慎重にカゴの方に移動させてみると・・・。まずは、腕が1本するするとカゴの中に伸びていき、何やらゴソゴソと新居の様子を探っているようです。しばらく探ったあと腕が戻っていきます。
・・・どうやら気に入ってくれなかったようです。もうこうなれば少し力ずくで移動させるしかありません。3人のスタッフがミズダコの下へ手を差し込み、お互いにアイコンタクトをとります。
「せーのっ!」
・ ・・ビクともしません。もう一度。
「せーのっ!!」
・ ・・ズルッ・ズルッズルズルズル・・バチャーン!
入りました!ミズダコに目立った傷も無く、何とか移動成功です。全員が安堵からため息がもれます。
 あとはトラックの蓋をしっかり閉めて、ポンプやエアレーションが回っていることを確認したら海響館へ出発です。
 水族館スタッフの数ある仕事の中でも特に気を使うのは、生物の輸送です。いくら輸送用トラックといえども、水量やポンプの性能に限界があるため長時間トラックの水槽に入れておくのは、生物にとって大きな負担が掛かるのです。そのため、いかに安全に早く目的地まで運べるかが生物の生死を分けると言っても過言ではないのです。
 午前11:00に城崎マリンワールドを出発した我々は途中のパーキングエリアでドライバー交代や水温チェックなどを行いながら、海響館に帰り着いたのは午後6:00でした。
 早速、ミズダコを予備水槽へと移動させます。加勢に駆けつけた女性スタッフからは「キャーッ!」、「キモいーっ!」といった声が聞こえます。
 何故か男性スタッフは不思議な笑顔です。
・ ・・ということで、数人がかりで予備水槽へ入れ、無事に今回の1194H
にも及ぶ長旅は終了です。
後日ミズダコの重さを測ったところ、平均体重は、約25Lでした。
このミズダコは5月8日まで、3F屋上広場のふれあい水槽で展示しています。


協力:城崎マリンワ−ルド
水温をしっかりチェック
蓋もしっかりと締めて
生きものたちの状態を確認
予備水槽へ搬入
ふれあい水槽の様子

魚類展示課 清家 和洋

[最新一覧へ]