[最新一覧へ]

第63回 寒がたったら、あおのり漁


  下関の子供たちにとっては今年は二度、雪合戦を楽しむことができました。下関に雪が積もるのは例年一度あるかどうか。おそらく、次の雪合戦は一年後の冬となることでしょう。こんな寒波がさったあとは、下関の北方、狗留孫山(くるそんざん)からは雪解け水が流れ出し、粟野川より日本海に注がれます。地元ではこんな一年で最も寒い時を「寒がたつ」と呼びます。

 山口県豊浦郡豊北町、粟野川の河口では例年1月から3月にかけて特産のあおのり漁が行われます。その漁の様子を見学してきました。
 平成16年2月8日、早朝、朝もやの中、川岸には胴長姿の人々が集まってきました。総勢120〜140人程。漁の日時はあらかじめ決められており、実際に川に入り漁が行えるのは15分〜30分程度です。サイレンが回りの山々にこだまするといっせいに川の中へ入っていきます。水温は5度。各自"サライ"と呼ばれる自作の熊手のようなものをもち、川底の石より成長したあおのりをからみとっていきます。

 鮮やかな緑色をしたあおのりが、あっという間にざるいっぱいになっていきます。あおのりは、川岸で洗い、各自が自宅に持ち帰り、もう一度念入りにすすがれます。

 粟野の各家庭の玄関先には、あおのりをすすぐための水道の口がちょこんと設置されています。

 その後、浜辺の縄にかけて干せば、"粟野のあおのり"の出来上がり。食べ方は少しあぶってから手で揉んで粉にします。暖かいご飯にのせて、醤油をたらして頂きます。あおのり独特の香気だけでご飯が何杯でも食べれそうですよ。

 粟野のあおのりは、"緑藻綱アオサ目アオサ科アオノリ属スジアオノリ"です。漁獲された一本のあおのりを取り出し、水を張ったバットで伸ばすと、主枝の下部より多くの側枝が出ているのがわかります。また、顕微鏡では、細胞が縦に概ね規則的に並んでいるのが観察できます。スジアオノリは、日本各地の汽水域など静かな場所に多く、高知県や徳島県の河口ではひびが立てられ、養殖も行われています。

 寒がゆるみだす3月には粟野川の河口にハゼの仲間、シロウオが産卵のため姿を現します。水の中でも、もう春はすぐそこまで来ているようですね。
河口でのあおのり漁の様子の写真
河口でのあおのり漁の様子
あおのり漁の様子アップの写真
あおのり漁の様子アップ
あおのり漁を行う際の漁師のかたのいでたち写真
いで立ち
あおのりを縄に干している様子の写真
縄干しの様子
スジアオノリの写真
スジアオノリ
スジアオノリの顕微鏡写真(300倍)
スジアオノリ顕微鏡写真(300倍)

協力:豊北町漁業協同組合粟野支所の皆さん
写真提供:(独)水産大学校 生物生産学科 村瀬昇博士
参考図書:吉田著 「新日本海藻誌」内田老鶴圃

魚類展示課 土井 啓行

[最新一覧へ]