第30回 サーフィンボード?の持ち主


 突然ですが、みなさんは、砂浜などでサーフボードのような楕円形の形をした白い物体を拾ったことはありませんか?インコを飼われている方は、くちばしを研がせるためにペットショップで購入したことがあるかもしれませんね。実はこれ、コウイカの仲間の軟甲なんです。コウイカの仲間たちはこの軟甲を利用して浮力の調整を行なっているんですよ。春先になると海でこの軟甲をよく見かけるようになる筈です。コウイカたちは普段は深い海の底に棲んでいますが、冬の終わりから春先にかけて浅いところに浮上し、海藻の根や漁網などに卵を産みつけます。そのため、この時期になると定置網などでイカが頻繁にとれるようになるのです。
砂浜に打ち上げられた
コウイカの軟甲

 海響館では近隣の漁師の方々に生きものを頂くことがあるのですが、そんな中、3月のはじめに、コウイカが3匹やってきました。イカ類の飼育は大変難しいといわれています。このコウイカも、残念ながら数日で死亡してしまったのですが、水槽の中にある置き土産をしていったのです。それは、水槽の底のレイアウトの網に産みつけられた卵でした。イカの寿命は一年程度で産卵を終えると死んでしまいます。この卵を回収してしばらく様子を見ることにしたのですが、通常1ヵ月程度で孵化する筈が、なかなか孵化しませんでした。
卵を産むコウイカの写真
卵を産むコウイカ

イカの赤ちゃん
手作りのプランクトン採集器
(上:実物 下:イラスト)

 水温や照明など試行錯誤をくり返し、5月の終わり頃にようやく孵化しました。全長1Bにも満たない可愛いイカの赤ちゃんの誕生です。手のかかった分、かわいさもひとしおです。
 そんなかわいい赤ちゃんですが、ここでまた問題が発生しました。赤ちゃんの餌の確保です。イカの赤ちゃんは生きた餌しか食べません。海響館では他の魚用の活餌として活イサザアミ(体長約1cm)を常備していましたが、稚イカにとってサイズが大きすぎる上に、大食漢の彼らにはとうてい餌の量がおいつきません。
 そこで、プランクトンを採集し、餌とすることにしました。採集方法として最初に思いついたのは、プランクトンネットという網をつかった採集法。しかしこの方法では、一回で採集できる量に限りがあるし、イカ達に満腹になるまで食べさせようと思うと、何度も何度も繰り返しネットを引かなければなりませんでした。
 「どうにかもっと簡単にたくさんのプランクトンを採集できないだろうか?」と、試行錯誤の結果作り出したのが、左の写真にある‘プランクトン採集器’。プランクトンの中のいくつかの種類は、光があるとその方向によってくる性質(正の走光性)があります。その性質をうまく利用したのが、この採集器。懐中電灯の光に引き寄せられてよってきたプランクトンたちをセル瓶の中にあつめちゃおうというわけです。セル瓶には返しが付いているので一度入ったプランクトンは、外にでられません。この採集器を、夜の間沈めておき、翌朝回収します。これによって手ごろな大きさのプランクトンが沢山採れるようになりました。

その後もコウイカの他にミミイカ、カミナリイカ、シリヤケイカ、アオリイカの卵が次々と孵化しました。現在も孵化の真っ最中です。生まれた赤ちゃん達は、餌を沢山食べてすくすくと育っています。成長の度合いには個体差がありますが、一番大きいものではなんと生まれた時の5倍以上、約5cmにも達しました。
アオリイカの卵

 彼等が大きく育って卵を産み、どんどん子孫を残していってくれることを願っています。海響館生まれのこの赤ちゃん達、現在2階の下関の自然水槽で展示中です。今しか見ることのできないちっちゃなコウイカにぜひ会いにきて下さいね!!

魚類展示課 木村 公美



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コウイカが餌を食べている所を見てみよう・・・腕の動きに注目!!
(平成14年7月15日録画)

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