第25回 お魚たちはこうやってやって来ます
「水族館の魚たちはどこからやって来るの?」お客様からよくお受けする質問です。答えのひとつとなるのが「定置網」。海響館にいる魚たちの多くがこの定置網出身なのです。
定置網にはいろんな種類の生き物が入り、また生き物を傷つけずに採集し、すぐに運ぶことができるなど水族館にとってはうってつけの漁法なのです。
海響館では、いくつかの定置網を操業されている漁協に協力頂き、生き物の収集を行っています。今回はその中で、下関市の北に位置する豊浦郡豊浦町室津定置網での船上での収集の様子をご紹介します。
朝の室津漁港
まずは、合羽、長靴、帽子、軍手、腕抜きで身を整えます。室津定置では一隻に8人が乗船し漁にでかけます。出漁は日の出が合図となります。
船上からしか眺められない、切り立った岸壁や岩肌、町並みなどを眺め、ものの10分もすると定置網に到着です。室津では定置網でも落網が設置されています。海面にはブイがあり、水中の網の位置、構造がわかるようなっています。ブイと網をつなぐのがいくつもの種類のロープです。
船上機器の円筒状摩擦車(左)と球状摩擦車(右)。
昔の漁師の腕が太かったのは、すべて人力だったからとも?
決められたロープを順々に手繰り寄せ、網を絞り、揚げていきます。船より大きな網を揚げる時、8人の息が合わなければなりません。さもないと、そこから獲物が逃げてしまいます。潮の流れや風向き、網の中の魚群の動きなどを感じ取りながらロープを緩めたり引き寄せたり、縛ったりを繰り返して「袋小路」の状態にしていくのです。ロープを手繰りながら、水面下の魚影に目を凝らします。
例えばアジがたくさん網に入っていると、水面には泡があがってきます。おそらくこれは、急激な水圧の変化に対応してアジが泡をだしているようです。他の魚種がたくさんあってもこの現象は起こりません。
ここが勝負の時。魚たちが網の中で擦れる前に、目ざとく収集を行います。雑魚と呼ばれる魚たちのなかにめったにお目にかかれない生き物が含まれていることがしばしばあるからです。いよいよ網が揚げられると、魚によって、船上の生簀に活かしたり、かごに集めたり、海に帰したりと振り分けていきます。
船上はまさに“戦場”のようで、アジ、イワシが多ければ眼鏡は鱗で視界ゼロとなり当然顔面に鱗が張り付き半魚人なり、イカの時にはすみまみれです。
漁獲物の取り込みの様子 その1
漁獲物の取り込みの様子 その2
冬から春に移るこの季節はいろんな種類のイカが獲れ、サクラが散り、田にレンゲソウが咲き出すと海ではだんだん水温が上がり、魚の種類も増してきます。
そうです。これからが“雑魚”収集のシーズンインといったところでしょうか。
また室津定置は、周囲に磯、藻場、砂浜があり、魚に限らず、ヤドカリ、ヒトデ、ナマコ、巻貝なども収集することができるのも特徴です。
今年はどんな生き物が獲れるのか楽しみです。
手にとるとその形がよく判るオワンクラゲ
2002/3/26撮影
漁のあとのお裾分けがあるのが判っているようで、カモメやトンビが待ち構えています。後方ブイの下には定置網が敷かれています。
2002/4/3入網したフリソデウオの幼魚
全長175mm体重26g
魚類展示課 土井啓行
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