第21回 関門海峡にて確認されたヤリマンボウについて

 2002年1月10日10時30分頃、下関水上警察署より下関岬之町19番地の岸壁付近にマンボウが迷い込んでいるとの通報がありました。海響館職員が現場にて確認したところ、舵ビレの中央部が突出していたためヤリマンボウと同定しました。衰弱(すいじゃく)が激しく、遊泳も困難な状態であった為、同日11時30分頃保護し、海響館内予備水槽へ運び込まれました。
海響館にやってきた後は時折正常に泳ぐものの、水面に体を横たえる事が多く、引き続き経過を観察しました。残念ながら翌日1月11日16時30分に力尽き死亡確認しました。その夜、解剖してその死因を調べましたので報告します。
ヤリマンボウ搬入の様子(平成14年1月10日)
1.岸壁付近を体を横にして
ただようヤリマンボウ
2.職員による救出 3.岸壁から引き上げ

ヤリマンボウ全身
ヤリマンボウのデータ
全長  141.0cm
体長 113.4cm
全高(※1) 160.0cm
体高 77.6cm
体幅 23.1cm
体重 97.5kg
性別 メス
肝臓(かんぞう)重量  680g
腎臓(じんぞう)重量 ※2 260g
脾臓(ひぞう)重量 80g
生殖腺重量 150g
胆嚢(たんのう)重量 360g
消化管長 ※3 658cm
消化管重量 ※4 8,060g
頭部
舵ビレ
内臓解剖側面
消化管内容物
外部所見 ヤリマンボウの特徴である舵鰭中央部の突出が途中より欠落
両眼白濁(はくだく:白くにごること)がみられた
額部、体側にすり傷が認められた
体表に寄生虫はみられない
内部所見 鰓弁(さいべん※5)、肝臓内、消化管内に寄生虫確認
胃、腸粘膜の炎症
消化管内容物 紅藻類(海藻の一種)、ビニール片
補足説明 ※1:背ビレ先端から臀ビレ先端までの長さ※2:右腎(うじん)摘出計測
※3:食道から肛門までの長さを計測
※4:腸間膜(ちょうかんまく)および内容物含む
※5:魚の鰓(えら)の赤く見える部分。細い血管がたくさん走っており、ここから魚は水中の酸素を取り込んでいます。
 全体を通じて衰弱している様子がみられました。しかし、死亡に至る直接的な原因は特定できませんでした。
 ヤリマンボウに関する情報も十分に持ち合わせていないというのが現状です。 このように数値を蓄積していくことや生物を飼育し観察をすることは生態解明の第一歩となると思います。
マンボウの生態もさることながらヤリマンボウの生活史、食性、成熟などどの項目をみてもわからない事ばかりだからです。
高知県の定置網漁業者の方はヤリマンボウとマンボウを区別していました。この2種では体表の色ツヤや興奮した時に体表にあらわれる濃淡の感じが違うのがわかります。現地ではヤリマンボウを‘ミズマンボウ’と呼んでいました。なんでも肉質がマンボウよりも水っぽいのだそうです。そのためかマンボウより食用にされることは少なく、「市場価値のない魚」としてみなされていました。この辺も情報の少なさの一因となっているのかもしれません。
マンボウとヤリマンボウ―この2種のもつ相違点にひょっとしたらマンボウ長期飼育のヒントが隠れているのかもしれません。                  

魚類展示課 土井 啓行

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