お魚探検隊
[最新一覧へ]

第156回 「直径1mmの謎の物体」


 海響館では、山口県では獲れない温かい海にすむ生き物を調達しに、毎年高知県に出かけます。いつもお世話になっている漁師さんの所へは、海響館のある下関から高速道路にのり、瀬戸大橋を渡って約8時間もかかります。到着した時にはヘトヘトですが、高知県ののどかな雰囲気と、きれいな太平洋の海をみると、そんな疲れもとんでいきます。高知県では、漁師さんにあらかじめ獲っておいてもらった生き物を受け取りに行くのと、自分達で潜水採集もします。潜ってみると、山口県に比べ水温が高く、ぬるい温泉気分。(実際にはそこまで水温は高くありません)気持よく泳いでいると、

 ん?・・・みたこともない白いものが浮かんでいるぞ?・・・・・・・なんだこれ???

 良く見てみると、そこらじゅうにたくさん浮いています。きれいな球形をしているので、ゴミではないのはわかるのですが・・・。
 その不思議な白いものは直径1mmくらい。採集した時期は夏。採集したところの下にはサンゴの仲間がたくさん生息している・・・。

はっ!もしかして・・・!!??

エンタクミドリイシ
 実はこの白い球形のものは、サンゴの卵だったのです。
 サンゴの仲間などは、夏に産卵することが知られており、その時期になるとよく新聞やニュースでも見かけます。
水中を漂う卵
 でもここで問題が一つ。この白い卵、どのサンゴが生んだのか分からないのです。とりあえず育てて大きくしてみようと思ったのですが、発見した最初の年は、卵が取れると思っていなかったので、卵を採集できるような道具を持ってきておらず、何とか持って帰れたのはたったの10個。それでもそのうち1つはポリプと呼ばれるところまで成長しましたが、その後死んでしまいました。その次の年は、たくさん卵を持って帰れたのですが、ポリプにもならず育成失敗。でもここまで、なにも成果がなかったわけではありません。1つしか育たなかったポリプですが、サンゴを研究されている方に見ていただいたところ、ウミトサカ科の一種であることが分かりました。 ウミトサカ科の一種のポリプ

 実はウミトサカ科のサンゴは種の同定(その生き物の種を見分けること)が非常に難しく、研究者が違うと同じサンゴを見ても、違う種名が出てくるほどです。もし卵から育てられれば、どのように成長していくサンゴなのか。このサンゴを他のサンゴと見分けるポイントがどこにあるのかなど、その種の特徴が分かり、種の同定に非常に役立つと思われます。

 そんなことがわかり、例年以上に気合いが入った2009年の夏。予想していた時期に、また卵を採集でき、いくつかの試行錯誤の結果、これまでの失敗がウソのように順調に育ってくれました。でもまだ直径5mmほどしかありません。卵の採集地の海では1m近くまで成長したウミトサカ科のサンゴが見られるのですが、そこまで成長するのはいつの日になることやら。当面の目標は種の同定ができるまで大きく育てる!です。種名が分かればまたお知らせします。


 魚類展示課  園山貴之
[最新一覧へ]
ホームへ戻る