お魚探検隊
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第148回 「木屋川のアユ事情」

 6月に入って、山口県の多くの河川で、アユの遊漁が解禁になりました。私のホームグランド(ホームリバー?)である木屋川も例外ではありません。この時期を今か今かと待ち望んでいた釣り人もきっと多かったはず。ということで、今回のお魚探検隊では、木屋川のアユ事情をお知らせしたいと思います。

 私はアユ釣りをしませんが、この時期の川の風景が好きです。若いアユが群れる姿には、何とも言えない清々しさを感じます。ところで、こんな当たり前のように見ている初夏の風景の裏側に、多くの場合、その川で漁業を営んでいる人達の努力が存在することを、皆さんはご存じでしょうか。
 木屋川では、もちろん海から遡上してくるアユの姿が確認されています。しかし、この川には、2つの大きなダムと2つの大きな堰があり、アユにとって利用しやすい環境にはなっていません。堰にある魚道を乗り越えていくものや、幼魚期をダムで過ごし成長するものもいますが、こういったアユたちだけでは、アユ漁に耐え得ることが到底できない状況にこの川はあります。そこで、木屋川で漁業を営んでいる吉田川漁協や俵山漁協では、4月から5月にかけてアユの若魚を放流しています。なお、こういった放流事業は、その川で漁業を営む者に義務付けられているもので、アユ以外にも水産資源として価値のあるウナギやモクズガニなどについても行われています。
木屋川の地図
木屋川ダム
 4月24日に、私は吉田川漁協が行っているアユの放流事業に立ち会う機会を得ました。ここで、その時の様子を紹介します。この日の放流は、午前10時から約半日をかけて行われました。用意されたアユは、重さにして約170kgで、木屋川中下流域の9箇所から放流されました。しかし、これだけの数のアユが毎年放流されているのにも関わらず、年を追うごとに捕れるアユの量は減っているそうで、「ダムの冷たくて、酸素が乏しい水が放水されているからね〜、それが影響しているのかな。以前よりも数が減って、サイズも小さくなった。」と少し寂しそうに、漁師さんが話していました。
アユ放流の様子
 ところで、木屋川に放流されているアユ達、どこからやって来ているか気になりませんか。実はこれらのアユ、山口県内の椹野川(ふしのがわ)漁協で養殖されていたものなのです。そこで、その養殖されているアユのことが気になった私は、実際にその現場に行ってきました。この際、漁協の方から、「うちでは、2箇所の養殖場で毎年約50tのアユを生産していて、そのうち約10tを放流用として県内の漁協に出荷しているよ。」という話を聞きました。つまり、県内の多くの河川に椹野川漁協生まれのアユ達が、多数放流されていて、それらのアユ達によって県内のアユ漁は成り立っていたのです。
椹野川(ふしのがわ)漁協の養殖場
  現在、海響館3階の木屋川水槽では椹野川漁協生まれのアユを展示しています。この水槽では、基本的に木屋川で採集した生き物を用いて、展示を行っていますが、アユに関しては椹野川漁協産です。普通なら、アユだけを外部から持ち込むことに違和感を覚えると思うのですが、残念ながら、この状態が実際の木屋川に近い形なのです。
 このように、多くのアユが放流されることによって、木屋川でのアユ釣りは可能になり、私の好きな初夏の風景が生み出されていました。つまり、木屋川を含めた多くの河川の環境は、その川で漁業を営む人達の弛まない努力の賜物だと言えるのです。
木屋川水槽を泳ぐアユ

 魚類展示課  藤井 幹雄
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