唐突ではありますが、皆さん、ちょっとご自分の背中の中心を触ってみて下さい。立派な脊椎骨(一般的にいう背骨のこと)がしっかりと通っていますよね。地球上の動物はこの脊椎骨を持つ「脊椎動物」と持たない「無脊椎動物」に大きく分けられます(図1)。皆さん人間は、言うまでもなく脊椎動物、そして海響館にいる魚やバンドウイルカも脊椎動物です。ワタクシ達は、というと自分で背骨を触ろうと思っても触る事ができません。なぜって腕がないから…ではなく、脊椎骨自体がないからなのです。という事は、ワタクシ達は魚ではありませんね。では、名前にある通りナメクジなのか、というとナメクジは貝等の仲間「軟体動物」ですが、ワタクシ達は軟体動物でもありません。じゃあ一体何なんだ!!としびれを切らした皆さん。ワタクシの体をよーーくご覧になって下さい。(写真1、図2)背中に通る一本の筋…これがワタクシ達の正体を明らかにする物なのです。この筋の名前は「脊索」と言います。んー。聞いたことがない??ちょっと!!この脊索、皆さん人間も一度は持ったことがあるものですよ!!
|



|
 |
<脊索動物>
精子と卵が出会ってできた「受精卵」が、生まれてくるまでに通る様々な器官ができる過程を「発生」と言います。脊椎骨を持つ脊椎動物は、発生の途中でいきなり脊椎骨ができるわけではなく、脊椎骨の基本構造である脊索ができます。脊索は発生の過程で消失し、脊椎骨に置き換わりますが、この脊索を一生涯持ち続ける動物の事を「脊索動物」と言います。前章で観察していただいたワタクシの背中に通る一本の筋、あれこそ正に「脊索」!!そう、ワタクシ達はナメクジでも魚でもなく「脊索動物」だったのです。
|
<大ブレイクした?2008年>
年も変わって早1ヶ月。2008年はワタクシ達の名が世に飛び交った年と言っても過言ではなかったと勝手に思っております。「ナメクジウオは脊椎動物の祖先に最も近い生き物」という見出しが新聞各紙を賑わせたのは2008年6月の事。これまで、脊椎動物の祖先に最も近い生き物は、ワタクシ達と同じ脊索動物の「ホヤ」の仲間であり、「ホヤの仲間→ナメクジウオの仲間→脊椎動物」の順で進化したと考えられていました(図3)。しかし、日本、アメリカ、イギリスの共同研究チームがワタクシ達の遺伝子情報を解読し、ヒトのそれと比較した結果、ワタクシ達とヒトとの遺伝子の並びが非常によく似ており、ワタクシ達から直接的に脊椎動物が進化したとわかりました。一方で、これまで脊椎動物の祖先に最も近い生き物であると考えられていたホヤは、ワタクシ達が脊椎動物の祖先に最も近い生き物から分岐した後、さらにそこから分岐した事が明らかになりました(図4)。
|
 
|
<2009年も引き続きブレイクの予感?!>
大ブレイクした2008年もあっという間に終わってしまい、ワタクシ達ももう時の人、いや、時のナメクジウオか…と思っていた矢先に入ってきたのは、2009年は「ダーウィン生誕200周年!!」「『種の起源』発行150周年!!」の2大情報でした。皆さんもご存じの通り、ダーウィンは「全ての生き物は共通の祖先から進化した」という進化論を唱え、生物の進化を語る上では欠かす事のできない人物です。150年前、ダーウィンが『種の起源』を記した時は、ワタクシ達が一体どのような生き物なのかまだはっきりとしていませんでした。もちろん、ダーウィン自身も「脊椎動物の祖先に最も近い生き物はナメクジウオである」なんてことは予想だにしていなかったでしょう。ほんの150年の間にワタクシ達の素性がものすごい速さで明らかにされてしまうだなんて、正直申しますと、当の本人達も驚いております。「ほんの150年??150年も、じゃなくて??」とお思いでしょうが、ワタクシ達、実は5億年以上も前からほとんど形が変わっていないのです。そう思うと見ないではいられないでしょ??
ということで、次回は海響館でお会いしましょう。水槽の前ではこう言って下さいね。
「コイツって、俺らの祖先に超近いらしいよ。」(写真1、2)
|