お魚探検隊
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第138回 「アゴのない魚」

 魚の中にはアゴを持たないものがいます。実は海響館でも、そんな一風変わったアゴのない魚たちが、展示されています。そこで、今回はそのアゴのない魚たちの中から「スナヤツメ」を取り上げてご紹介したいと思います。
 スナヤツメは、約5億年前に現れ、その後1億年にわたり栄えた無顎類の子孫です。姿形はほぼ当時のままで、最も原始的な生き物の1つに数えられています。アゴがない他に、対を為す胸ヒレ、腹ヒレがない、エラが袋状、骨格が軟骨性で不完全である等の原始的な特徴を体の至るところに残しています。
 このスナヤツメ、実は淡水魚で、意外と身近なところに棲んでいます。下関市でも市の東部を流れる木屋川で見ることができます。私もつい先日、木屋川に行ってきて、スナヤツメたちに会ってきました。と事も無げに書いていますが、実は出会うまでにはかなりの労力を費やしました。夜行性で日中は川底に潜っていて、生息域が広くなく局所的にしかいないスナヤツメを探し当てるのは、並大抵ではなかったのです。まる2日、生息していると思われる箇所や以前いたと聞いた箇所を探し回りましたが、影すらも見ることができませんでした。そこですがる思いで、木屋川産スナヤツメを幾度も採集している豊田ホタルの里ミュージアムの川野さんを訪ね、ご教授を願い、ようやく木屋川支流の稲見川で出会うことができました。
 現在展示しているスナヤツメは、ほとんどがアンモシーテス幼生と呼ばれるまだ大人になりきっていない個体です。ですから、今、見に来られても、スナヤツメ本来の姿を見ることができないかもしれません。しかし、この冬に多くの個体が、子供の姿から大人の姿へと変態します。幼生の時になかった目が現れ、体色も金属光沢を帯びるようになります。そして、変態した個体は幼生の時よりもなんと一回り小さくなってしまいます。つまり、この冬海響館を訪れると、運が良ければ変態途中の珍しい個体を目の当たりにできるかもしれません。
 
スナヤツメの成魚
スナヤツメに出会えた木屋川支流の稲見川
スナヤツメのアンモシーテス幼生
 スナヤツメの生態は、ほぼ解明されています。ですから、この冬成魚になった幼生たちが、その後どのようになるか予想をつけることができます。では、この後どのようになると思いますか。実は、成魚になったスナヤツメは、消化器官が糸状に退化し食事を摂れなくなり、春までの期間を、相手と産卵に適した場所を探すことに費やします。そして、桜の時期から梅雨にかけて産卵し、4年の生涯に幕を閉じるのです。なんと、スナヤツメは一生のほとんどを子供の姿(幼生)で過ごします。
 現在、スナヤツメの他にアゴのない魚として、2階の砂泥底水槽でヌタウナギを展示しています。どちらも細長い体形をしていますが、色や大きさ、そして死肉を食べる食性や多量の粘液を出す事など、同じアゴのない魚でもスナヤツメとは多くの点で異なっています。しかし、その体から感じる太古の雰囲気は、まったく同質のものです。あと、無顎類ではないのですが、脊椎動物のルーツと言われているナメクジウオの展示も行っています。
 アゴのない魚たちやナメクジウオ等の太古の姿を残した生き物たちは、私たちの起源を考える上で欠く事のできない存在です。ですから、初心に立ち返りたい時や迷いが生じた時は、ご先祖様に相談するつもりで、スナヤツメたちに会いに来てみませんか。その姿を見て、悠久の昔に思いを巡らせるだけで、何か良いきっかけを掴めるかもしれませんよ。
ヌタウナギ



 魚類展示課 藤井 幹雄

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