海響館ではこの夏にウミガメの産卵を確認することができました。産卵場所は、下関市の西にある彦島の西山海水浴場で、人工的に造成された砂浜が市民に親しまれている場所です。海響館からは車で15分程の距離にあり、仕事では展示生物の採集で、休日はダイビングやビーチコーミングで月3回は必ず通う場所です。
足しげく通う海水浴場でウミガメが産卵したことにスタッフ一同とても驚きました。なぜならそこが人工の砂浜で、住宅地が目と鼻の先にあり、あまりにも人間生活の場に近かったからです。
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芝生の上をウミガメが歩いている!
市民の方から、9月12日の夕方に海響館へ「ウミガメを見つけたけれども、どうすればいいですか?」との連絡を受けました。状況を確認すると、西山海水浴場で海とは反対側の芝生の上を歩いていたとのことでした。この時点では、クサガメやミシシッピアカミミガメ(通称:ミドリガメ)がたまたま海水浴場近くにいただけなのでは?と疑っていましたが、ウミガメの特徴であるヒレ状の脚をしていることや、頭を甲羅に収容できないことが会話から読み取れたので、急いで現場に急行しました。 |
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生まれて間もないアカウミガメ
現場で確認すると、甲羅の大きさが4.5Bの孵化直後のアカウミガメと判明しました。保護されたウミガメは活発に動き回り、怪我もなく健康状態も良好でした。水族館での保護の必要性がないと判断できたので、放流することにしました。しかしこの時点では、西山海水浴場で産卵孵化があったのか、もしくは近隣の砂浜から産卵孵化したものが流され誤って上陸してしまったのかは判断することができず、放流する場所が保護された海水浴場でよいのか悩みました。万が一誤って上陸した場所であれば、再度上陸する可能性があるため、放流場所の検討が必要になります。そこで、海水浴場へ行って孵化の痕跡を探すことにしました。
一見すると普段と変わらない砂浜でしたが、丹念に観察すると無数の子ガメが歩いた痕跡を見つけることができました。つまりアカウミガメが西山海水浴場で産卵孵化していたのです。
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産卵巣調査の結果、135個の卵を確認し120個が無事孵化していました。
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無事に育って!アカウミガメ
産卵が確認できたので、西山海水浴場で放流することにしました。ちょうど孵化が始まる夕方だったので、保護してくださったご家族と一緒に海へ戻しました。砂浜に離された子ガメは、懸命に海に向かって進んで行きました。大きなゴミや砂浜にできた窪みも乗り越えて海に突き進む姿は、生き物の強さを改めて感じさせてくれました。放流された子ガメが順調に成長していけば、北部太平洋のアカウミガメの生活史から想定すると、まず海流に乗ってアメリカ西海岸を目指し、しばらく成長した後の15年後には繁殖のために日本へ戻ってくると考えられます。是非とも生きて戻ってきてほしいものです。
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人間にたくされた課題
最後になりましたが不思議な点があったのをお気づきになりましたか?ずばり不思議な点とは、子ガメが保護された場所です。保護された場所は、海とは逆の芝生の上でした。本来海に向かって進むはずのウミガメが、反対方向の芝生の上で見つかったのはなぜでしょうか?実は単純に海と反対方向の陸地が明るかったためです。孵化したウミガメは、月明かりに照らされた海を目指して進んでいきます。しかし、海よりも明るい場所が近くにあると、その場所を海と勘違いして進んで行ってしまいます。今回の保護されたウミガメも、実は街頭などの人工物の明かりを海と勘違いしたようでした。
ウミガメが産卵し無事に孵化したことは、とても喜ばしいことですが、今回の保護は、ウミガメと人間の関係についていくつかの課題を教えてくれました。人にとっては些細なことでも、生き物にとっては生死を分ける問題が身近にあることをもっと考えなくてはならないのかもしれません。
求む!ウミガメ情報
海響館では、下関周辺のウミガメ情報を集めています。漂着や産卵情報などありましたら、ご一報いただければ幸いです。
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