お魚探検隊
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第125回 「フグ水槽の名脇役 〜デビューまでの道のり〜」

 海響館の3階にあるごつごつとした岩に囲まれた水槽をご覧になられたこと、ありますか?この水槽は、「いろいろな形のフグ」という名前で、15〜20度弱の水温帯に生息するフグを中心に展示しています。この水槽には、つんつん棘のたった体にくりくりっとした眼のポーキュパインフィッシュやちょこまか動き回るピグミーレザージャケットなど主役級のフグがいて、見ていて楽しいのは楽しいのですが、なんだか物足りない。なんで物足りないの?って考えてみると、物足りなさの原因は「フグしかいない」ということにあるような気がしてきました。自然界ではフグしかいないエリアなんてありません。とはいっても、フグを紹介するための水槽なのですから、フグを中心にすえた展示をしたい、けどもっと見応えのある展示をしたい…。そんなジレンマの中で行き着いたアイデアが「無脊椎動物とフグとの同居」でした。 いろいろな形のフグ 水槽全体ポーキュパインフィッシュ
 そんなの簡単なんじゃないの?って思われるかもしれませんね。実は、フグはとっても病気になりやすい魚。フグとアジなど他の種類の魚を同じ水槽に入れて飼育していると、一番に病気にかかるのは多くの場合'フグ'です。また、病気の進行が大変早く、あっというまに全身に広がって死んでしまうことが多いのもフグの弱点の一つです。ですから、病気になるたびに薬をつかった治療を行うのですが、この薬が問題なんです。フグにとっては薬でも、多くの無脊椎動物にとっては毒、しかも命を脅かすくらいの猛毒として働いてしまいます。フグと無脊椎動物を一緒に飼育するという目標のためには、まずはフグを病気にさせないということから始めなければいけませんでした。

 フグの病気になる原因はいろいろありますが、多くの場合は水環境の悪さが原因にあげられます。水槽の中の隅っこなど、水の流れがないために水が動かないでよどんでしまうことがあります。そのよどみこそ、病気の温床です。無脊椎動物との同居を目指す!と心に決めた私は、よどみをなくすべく一年がかりでフグ水槽改造計画を行いました。

 まず手をつけたのが、水槽の底の変更です。以前は、水槽底にこぶし大の石をしきつめていました。水槽の景観としては、背景の岩ともマッチして良いとは思うのですが、岩の間にフグたちの糞や食べ残しがたまり、どうしても水がよどんでしまっているようでした。そこで、この石を全部とっぱらい、そこに直径1.5mm程度の砂をしきました。また、水槽の中で水がよどむことなく流れるようにろ過槽から戻る水の出方にも工夫を加えました。
 この水槽の場合、水槽の裏側も重要でした。正面からみると岩のように見えているものは実は、FRPという素材からできた偽物の岩でうすっぺらい形状をしていて、水槽をコの字状に覆っています。この偽物の岩と水槽の間にある水がよどんでしまうと、それが原因でフグたちに病気が蔓延してしまうこともあります。そこで、エアーストーンを入れてここにも水の流れを作成!これでこの水槽のなかはほぼよどみ無しの環境が出来上がりました! 水槽裏側

 これで飼育を続けること1年…。フグたちによく発生する「肌虫」も粉をふいたように全身を覆ってしまう「白点病」も全く出なくなったのです。これでまずは、第一関門クリアです。
 次は、組み合わせです。フグたちは基本的にエビやカニが大好きですから、それらの種類は一緒にはできません。水槽をお掃除してくれそうな種類で、フグが好んで食べそうではない種類ってことで、最初に入れたのはナマコでした。突然のナマコの登場に、興味津々のフグたち。特に好奇心旺盛なピグミーレザージャケットはすぐにつつきにかかりました。「なんかうまそうなのが来たな!」って感じで、ナマコのぴょこっと出た足をしばらくつんつんとつついていたピグミー。まだ食べ続けるのかなあ?と心配してみていると、急にぴくっと動きがとまって、とたんにすごい勢いで水を吐き出しながらバックし始めました。きっとよっぽどまずかったのでしょうね。水槽越しに、ピグミーの「こんなの喰えるか!」って声が聞こえてきそうでした。その後はどのフグもナマコには興味を示さなかったので、どうやらナマコとフグたちは、一緒に仲良く生活できそうです。次は、ナマコと同じ仲間のヒトデ。これも難なくクリアしました。

 そんなこんなで、今では4種類のフグたちと7種類の無脊椎動物たちが水槽の中で仲良く暮らしています。フグたちのかわいらしい姿をご覧になった後には、水槽をすみからすみまでくまなく眼をこらして、かくれんぼがとっても上手な無脊椎動物たちも探してみてください。特に、難しいのがミズクラゲのポリプ。直径2mm程度ととっても小さいものなので見つけるのがかなり難しいかも。でも、ミズクラゲのポリプはわざわざ水槽に入れたというわけではなく、海水と一緒に入ってきていつのまにか居着いちゃったものなんですけど…ね。
マナマコ
ピグミーレザージャケット
コモチイソギンチャク
ミズクラゲのポリプ

 魚類展示課 杉山 由貴子

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