お魚探検隊
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第121回 「ゴギという魚の懸命な姿」


 秋の山は紅葉が美しく、ちょっと辛い山登りも頑張ってしまう気持ちにさせてくれます。ただ美しいのは紅葉真っ盛りの木々だけではありません。山の中には美しい魚もすんでいるのです。その名も「ゴギ」。中国地方の一部の山にしか生息していないサケ科イワナ属の魚で、山口県錦川に生息するゴギが日本に生息するイワナ属の西限にあたります。錦川上流へ行って、潜水観察をしてきましたので、ご紹介します。 ゴキの頭部 頭部の唐草模様が他のイワナ属と異なります
過酷な環境にのみすむことが許されたゴギ
 ゴギがすむ場所は、標高700m以上の山から流れる川の源流部のみです。水は清らかで、夏の水温も20℃は超えない場所に限られます。このような場所にはゴギ以外の魚は1〜2種類しか生息しておらず、他の魚が生活できない環境だと読みとれます。川の流れがどんなに激しくても、ゴギは岩のすき間や淵(少し深くなった場所)でひたすら流れに逆らって生活し、水生昆虫や水面に落ちてくる昆虫を食べて生活しています。このような光景は畳2帖程しかない細流
でも見られ、狭く浅い場所でも繁殖して次世代へと命が引き継がれていきます。

激流にも生息しています
紅葉深まるころ、命の継承が行われる
 秋から冬にかけてゴギの繁殖期になります。つがいをつくったゴギは、メスが卵を産む場所に尾ビレでくぼみを作ります。オスは近づく他のオスを追い払うのに懸命になります。産卵が近づくとオスとメスは寄り添い体を震わせながら放卵放精を行います。メスは卵が、流されたり食べられたりしないよう、小石をかけて埋めてしまいます。卵からふ化した稚魚は、すぐには泳ぎ出さずそこにとどまり、初春になってから遊泳生活をはじめます。新しい命が誕生するころには、親のゴギは約2年という短い一生を終えるのです。

ゴキの稚魚繁殖を終えてボロボロになったゴキ
ゴギに迫る危機
 人知れず山奥で生きているゴギですが、その将来が脅かされています。それは、森林開発と地球温暖化です。
 大規模な森林開発は、ゴギが生息する川に大量の土砂を流入させ、産卵に適した場所を破壊してしまいます。また、森がなくなると太陽の日ざしが川に降り注ぎ、水温を上昇させてしまいます。その結果、生息限界の水温を超えてしまいかねません。地球温暖化も同様で、その影響は広範囲に及んでしまいます。もし、年平均気温が3度上昇した場合、ゴギのほとんどが絶滅してしまうともいわれています。
 数が減少しているゴギにとって、必要なことはきっと「中国地方の限られた山にしか生息しない魚が、懸命に生き、命を継承し続けている」という事実を知ってもらうことではないでしょうか。いつまでも紅葉が美しい山でゴギという美しい魚に出会うためにも。


 魚類展示課 落合 晋作

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